別人のように変わってしまったお客さん

私はもうあの不機嫌な顔を見なくて済むと思って安心した。

それから半年ほど経ったある日のこと、久しぶりにそのお客さんが来店した。

普通に買い物をしていったのだが、以前とは全くの別人のように人が変わっていた。

私にあれほど暴言を吐いていたのに、帰る際に「ありがとう」とまで言ってくれたのだ。

その話をおばちゃん店員に話してみた。

おばちゃん店員「本当に本人だったの？」

私「間違いありません、買ったタバコの銘柄も以前と同じでした」

おばちゃん店員「双子の兄弟とかじゃないの？」

私「双子だったらもっと早くに存在に気付くと思うんですが・・・」

おばちゃん店員「絶対、半年前の人と別人だと思うけどねぇ」

来店しなくなってからの半年間に一体何があったんだろうか？

あそこまで暴言を吐く人が急に人が変わって優しくなるとは思えない。

買ったタバコの銘柄も同じだったことで、別人とは思えなかった。

コンビニバイトをしていると様々なお客さんと対面するが、そう簡単に性格が変わる人を今まで見たことがない。

クレーマーに絡まれたことも過去に何度かあったが、彼らがそう簡単に反省して優しくなることなんてほぼなかった。

だからこそ、あのお客さんの人格が急変したことに驚きを隠せなかった。

人格が変わるほどの出来事が半年の間に起きたのかもしれないが、人はそう簡単に性格が変わることはないと思う。

彼の身に一体何があったんだろう・・・。

真実が分からないまま、私は大学を卒業してコンビニバイトを辞めてしまった。

今でもコンビニに買い物に行くたびに思い出すことがある。

別人のようになってしまったあのお客さんは今はどうしているのかと・・・。