変化する映像

俺が中学の頃の恐怖体験。

テレビで心霊写真や心霊ビデオが流行ってた時代だったから、俺の通う学校でも怪談話とか肝試しが生徒の間で横行してて、斯く言う俺も友達とよく心霊ビデオをレンタルして観賞会を開いていた。

友達のAとBとよくつるんでたから、この日も3人俺の部屋に集まって心霊ビデオを見ていた。
内容は視聴者投稿型の短編映像をいくつも収録したもので、強く印象に残ったのは廃墟に侵入した投稿者の背後についてくる霊の映像だった。

数時間のビデオを見終えた後は3人で一番怖かった映像を挙げて、巻き戻しては何度も作り物かどうか考察して楽しんでいた。
今思えば、素人じゃフェイク映像か判断つかないし、当時の荒い画質で細工なんか見分けられないのに、あの頃の俺達はバカだったから仕方がない。

それで、俺がオススメした背後についてくる霊の映像が作り物かどうか確認するため、3人で画面に食い付くようにして見ていたときのこと。

「この幽霊、何だかこっち見とる気がせん？」

Aが小さな違和感に気づいて一時停止してみせた。

そう言われると心なしか体というか顔の向きというか、角度がわずかに動いている気がした。

「最初見たときはもっと向こう向いとる感じやったよな？」

Aが手振りを加えながら映像の差異を俺とBに伝えようとしていたが、俺が渋い顔をしたせいか、めんどくさくなり映像を巻き戻して問題のシーンを再生させた。

問題のシーンは、廃墟に居る男性が廊下を歩いていると画面の端から黒い人影がスーッとついてくるといったもの。
それが、改めて再生してみると、横向きに移動していたはずの霊の顔がややカメラ目線で移動するものに変化していた。

「な？変わってね？」
「あー、うん。顔っぽい部分がこっち向いとるみたいやわ」

興奮気味にBの肩を叩くA。
体を揺らされながら答えるBは、そこまで興味を惹かれてない様子だったが、映像の幽霊はまるで画面越しの俺達を睨んでるように思えて、俺はそれなりに恐怖を覚えた。

「さすがにこれは本物じゃね？」
「俺は本物だと思うわ」

見るたびに変化する心霊ビデオ。
字面だけで見れば確かに面白味があるが、現実で目の当たりにすると鳥肌ものだった。

「気のせいじゃね？録画した映像が変化するとかあり得ないでしょ」

心霊好きなのにどこか達観しているBが今にも鼻で笑いだそうという面持ちで口を挟む。

そのおかけでAがまた映像を巻き戻して再生させ、俺達は同じ映像を5度見ることになった。

すると、やっぱり初回と比較すると変化は明らかで、また、前回より顔の向きがこっちを向いている気がしてならなかった。

というか、完全にこっちを見てる。

「これ完全にこっち見てね？」
「うーん、だなぁ……」

横向きだった顔が90度も向きを変えればさすがの鈍感野郎でも気がつくだろう。
Bも納得したことで、Aが再びリモコンに手を伸ばしたところ、突然テレビ画面が真っ暗になる。