変化する映像

「あれ？」
「消すなよ」
「消してねえよ」

一瞬、Aの押し間違いでテレビを消したのかと思ったが、どうやら俺の早とちりらしく、画面右上にビデオの文字が浮かんでいたので再生中だとわかった。

そして、Aが画面に向けて再生を連打していた時、

ああぁああああぁぁあ

という、低い男の悲鳴に近い怨嗟の声が部屋中に響き、画面いっぱいに目のない男が口を大きく開けて映りこんだ。

俺達は驚いて絶句したが、咄嗟のことで肩を跳ねさせた後は、ただただ硬直したまま画面に釘付けになっていた。

ただ、悲鳴も男の顔も一瞬で消えたので、それ以上の恐怖はなかったのが救いだった。

しばらくして、俺達は正気を取り戻し、Aは驚いて落としたリモコンを拾い、映像を見直していた。

驚くことに、問題の映像は俺達が最初に見た当初のものに戻っていて、霊は横向きのままスーッと移動するだけだった。
顔の向きも横を真っ直ぐ向いている。

それから何度巻き戻して再生しても映像が変わることはなかった。

あの時の出来事はなんだったのだろうか。
もしかして、そういう仕掛けがされた心霊ビデオだったのかもしれないが、現物のない今となってはわからないままだ。