一家心中が起きた近所の廃墟
投稿者:繭 (42)
これは私が高校1年生の頃の出来事です。
夏休みに入って間もないある日の夜、私とB美は怖い話が大好きなA子に誘われ、20年前に一家心中が起きた近所の廃墟に肝試しにでかけました。
「一家心中の原因は?借金?」
「それがよくわかんないんだよね。近所のおばさんの話じゃ朝起きたら両親と高校生の息子、中学生の娘の一家4人が倒れてたんだって」
なにせ私たちが生まれる前の出来事ときて、同行するA子やBにも詳細はわからないみたいでした。
30分ほど歩いて目的の廃墟に到着すると、異様な雰囲気に気圧されました。
「ねえ、本当に行くの?やめない?」
「ここまで来たのに引き返せないっしょ、萎えるようなこと言わないでよね」
「びびってんならおいてくよ」
「ま、待ってよー!」
A子とB美は大乗り気で家に入っていき、小心者の私は取り残されないように慌てて後を追いました。
引き戸を開けて玄関に入ると埃っぽい空気が立ち込めており、小さく咳き込みました。床には大量の瓦礫とゴミがたまっています。
私たちは最も心霊体験の多い一階の仏間をめざしたのですが、その時変な音が聞こえました。
音の出所は二階でした。A子とB美にも謎の音は届いていたようで、三人で顔を見合わせおそるおそる上に移動します。
ギシギシと階段を軋ませて上りきった先には細長い廊下が伸びており、突き当たりに納戸がありました。
あの引き戸の向こうから物音が聞こえる……正直何も見ず聞かなかった事にして逃げ帰りたくなりましたが、くだらない見栄の張り合いがそれを許してくれません。
「きっと動物だよ、犬か猫でも迷い込んだんだって」
わざと明るく笑ってA子が引き戸に手をかけた瞬間、ガタガタッと激しく内側で音が鳴りました。三人同時に悲鳴を上げてあとずされば、今度はガリガリガリガリと裏板を引っかく音が響きます。
「ここから出してェ……」
幼い子どもの声で懇願された直後、恐怖が絶頂に達して階段を駆け下りました。
一体あれはなんだったのか、心中した一家に小さい子どもはいなかったはず……帰り道でさんざん話し合っても答えが出ず、今度は日を改めて昼間に確認に行きました。
ところが、二階の突き当たりの納戸がなくなっていたのです。
幻の納戸には何がいたのでしょうか?その何か、あるいは誰かは20年前の一家心中に関与しているのでしょうか?
亡くなった一家には存在をなかったことにされた子どもがおり、納戸に閉じ込められたその子が復讐をしたというのは妄想が飛躍しすぎでしょうか。
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