追いかけてきたもの
投稿者:kenbou (1)
あれは、私が大学生の頃ですから、もう10年ほど前のことになります。
幼馴染で親友のK、その彼女のY香、Y香の友達のSちゃん、私の4人でよく遊んでいました。
少し肌寒くなりはじめていましたので、10月の初めだったでしょうか。
その日もいつものように4人でカラオケに行き、日付が変わる頃まで歌ったり
飲んだりしていました。
そのうち、Sちゃんが飲みすぎてしまったらしく「外の空気を吸いたい」と言い出したので、
カラオケを切り上げて、車で30分ほど離れた山上にある展望台に行くことになりました。
その展望台は地元ではカップルのデートスポットとして有名で、
郊外の山上にあり市内の夜景が一望できる穴場です。
現地は駐車場とトイレがあり、トイレ脇にある30段ほどの階段を経て
展望台に着く形になっています。それ以外には、山の中腹にさびれたラブホテルが
1,2軒ある程度の、田舎の山でした。
着くなり、KとY香は気を利かせてくれたのか、
さっさと展望台へ続く階段を上っていってしまいました。
Sちゃんはというと酔いすぎたようで、車から降りるなりトイレに直行し、一向に出てきません。
深夜の人のいない場所で女の子を一人にするわけにはいかないので、
トイレの前で待つことにしました。何気なく展望台に続く階段のほうに目をやると、
古ぼけた常夜灯だけが時折チカチカとまたたいて、展望台への階段をおぼろげに
浮かび上がらせています。
…10分ほど経ったでしょうか?
反応のないSちゃんを心配し始めた、そのとき。
階段の5~6段目あたりに、黒っぽいモヤのような、煙のような物が見えました。
最初は、常夜灯に寄ってきた虫かと思いましたが、それにしては動きが鈍く、
黒い影がよどんでいるように見えました。
はっきり言うと人影に見えたのです。
輪郭だけははっきりしていますが、「体」にあたる部分はぼんやりとして、
後ろにある階段のかたちが透けて見えています。
うなだれて蹲っているようで、「顔」などははっきり見えませんが、なんとなく
中年の男性のような気がしました。今考えると不思議な話ですが、当然ながら夜のことで、
階段の周囲は真っ暗で見えません。
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