なかよくし手
投稿者:ミッツ (3)
タンッ、タンッ、タンと軽いリズムで嬉しそうにリビングから出て2階へ階段を上る弟の足音が聞こえます。
足音が聞こえなくなってから、しばらく時間が経ちました。
2階には寝室と母の部屋、弟と私の子供部屋の3部屋があったため、全部見て回っているのかなぁと特に気にすることもなく
途中だったビデオを呑気に見ていました。
ビデオに夢中だった私は弟のことを忘れて、気付くとビデオを見終わっていました。
そしてリビングにまだ弟が戻っていないことに気付きます…。
「2階にいるのー???」
閉めていたリビングの扉を開けて、弟がどこにいるか確認します。
でも返事はありません。
仕方なく、私も2階へ様子を見に行きました。
階段を上っている途中、なんだか空気が重くてあまり気は進まなかったので、早く弟を確認してすぐに降りよう。
そう思っていました。
まずは寝室から確認しようと扉を開けてみると、そこに弟は座り込んでいました。
窓の外を見て、ぼーっとただ座り込んでいます。
「何やってるの?眠いの?」
そう問いかけた私に弟は思わぬ返事をしました。
「うっ..な、なにか…いて..ううっ..」
リビングで大泣きしていたのとは正反対に静かにすすり泣きながら、そう答えました。
「え?何…?何言ってんの?」
弟が言っていることが理解できない私。
泣いている弟を見て自分の中にも不安がじわじわと広がっていき、いつの間にか一緒に泣いていました。
ただ、怖い。
ここにこれ以上いたくない。
「下に降りようよ…」
私は泣きながら、弟の手を引っ張って階段に向かいました。
でも、寝室から出て、扉を閉めようとした時に一瞬見てしまった。
窓の隙間からにゅっと伸びる手を…。
訳が分からず、慌てて階段を駆け下りて、リビングになだれ込みました。
時間は4時過ぎ。
母が帰ってくるまで1時間くらいです。
いつもなら一瞬のはずなのに、この日はこの1時間がとても長く永遠に終わらないのではないかとすら思えるほどでした。
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