なかよくし手
投稿者:ミッツ (3)
そして、母が帰ってきました。
いつも喧嘩している私と弟が珍しく、くっついて2人でいるのを見て、「あら、今日は仲良しなのね?いつもこうならお母さん嬉しいんだけどな」
と喜んでいます。
「お母さん…!!あのね!!今日2階で手が出てきて…それで怖くて…」
母は私を見た後に弟を見ました。
弟は涙を浮かべながら、何も言わずに頷いています。
心霊的なものは信じるとまでは行かずとも、否定的ではなかった母は一通り話を聞いてくれました。
聞いてもらえた安心感と母がいる安心感で落ちついた私と弟は泣き止んでいました。
そのあとはいつも通り夕飯を食べて、お風呂に入って寝る。
そして翌日を迎えました。
小学校から弟と2人で帰ると、また家には2人きり。
母は今日もパートに出ています。
昨日のことがあって、2階は“怖い場所”と認識している私たちはリビングに閉じこもっていました。
リビングからすぐのトイレに行きたくなった時も2人でいきました。
その時、ふと階段の方を確認しました。
2階には行かなかったはずなのに…今度は階段から昨日と同じ腕が伸びています。
昨日は2階で手だけ。
今日は階段まで来て、腕まで見えている。
少しずつ近づいて来ているような恐怖が私と弟を貫きました。
リビングに戻ってテレビを大音量でつけて気を紛らわせながら、母の帰りを待ちました。
母が帰ってくるなり、2人で母の元に泣きながら飛び込むと、母は「また見たの?」と聞きました。
2人で泣きながら頷くと、母は続けます。
「今日ね、お母さんお寺さんに電話したの。それで聞きたいことがあるんだけど…いい?」
母の質問に私と弟は黙って頷きます。
「その手は黒かった?それとも普通の肌だった?」
普通の人の手みたいだったのを覚えていた私はそのまま母に伝えました。
すると、少し緊張していた母の顔から力が抜けました。
「黒いのだと、ちょっと良くないみたいなんだけど、そうじゃないなら、大丈夫だって言ってたよ。
なんかね、手とか腕だけ出てくる場合ってね、“仲良くして”、“一緒にいて”、“泣かないで”とかそういう意味みたいなの」
“なかよくし手”。
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