猫の死ぬ交差点
投稿者:胸肉 (4)
高校の近くに『猫の死ぬ交差点』というのがあった。
名前の通りその交差点で猫が何匹も死ぬ。いや、もしかしたら何十匹なのかもしれない。僕らが高校にいた頃でも多分10匹以上は死んでいる。
死因は轢死。頭蓋が潰れ脳がこぼれた猫の死体が放置されていたこともあった。
不思議なのはなぜそこで猫が死ぬかということだ。猫だけなのだ、犬や鳥は何ともない。猫の死体だけが増え続けた。
そんなある日、僕が学校に遅刻して9時近くにその近くを走っていた時のことだ。走りながら、言い訳を考えつつその交差点の前まで来た。僕は車の往来の切れ目であることを確認する。時計の針がどんどんすぎていくのに信号は赤。仕方ないので、信号無視して横断歩道をわたった。車まではまだ距離があった。走りながらふと横断歩道の半ばの地面に目が留った。
いつの間にか猫がいた。ちょこんと座っている。
けれど構っている余裕もない。無視して、走り抜ける。近くには誰もいない。急いで渡り、とっさに振り返る。
血の気がさーっと引くのがわかった。
猫の顔は、明らかに普通じゃなかった。
見たことのない生き物の顔。
人のようにも猫のようにも見えた。
それは不気味で、恐ろしくて、悲しかった。
その顔が泣きながら僕を見ていたのだ。
トラックがその頭を鈍い音をたててつぶして通り過ぎた。
全身ぐちゃぐちゃだった。
もしかしたら、
あそこは猫の自殺スポットなのかもしれない。
あの顔は自分の人生に絶望した顔だ。
今は、そう思う。
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