人形の町での不思議なできごと
投稿者:心結 (5)
私が住む県内のある街に、人形(お雛様)が有名な町があります。季節になると商店街に並ぶお店はみんな自分の人形を飾り、お客さんに公開するのです。
中には江戸時代から代々受け継いでいるお人形や、なんなら江戸よりもっと前からのお人形も。今の時代に売られているような優しい顔をしているお人形は少なく、形も大きさも様々で、なんか人間らしいというか生々しいというか、そんな印象を持つお人形が多いです。
中には髪の毛に人毛を使っているというお人形も数多くあるのです。
ある日、私たちは中学校の遠足でこの街を訪れ、お人形を巡る遠足を行いました。
一軒一軒、お人形には様々なエピソードがあって、お店の方からお話を伺い、あとでレポートにまとめるというなんとも中学生らしい遠足です。
5~6人で班を作り、私たちも決められたお店へ向かいます。
同じ班になった男子の一人が「俺、人形とか苦手なんだよね」としきりに話していましたが、その時は何も気になることはありませんでした。
全部で5件のお店をめぐることになっていて、最初の2件が終わりお店を出たとき、その男子が体調不良を訴え始めたのです。
これ以上は無理だと言うので、引率の先生に引き渡すことになり、近くの公園で待っていました。
すると、顔色の悪い男子が細々とした声で話し始めました。
「みんなはあの人形、見ててなんともない?」
「え、なんともないけど・・・どうゆうこと?」
「俺は無理なんだ。なんかずっとこっちを見てる気がするっていうか、目で追われてるんだよね」
「そんなはずなくない、それかそういうからくりのある人形なのかな?」
「いや、そういうことじゃなくて。なんか魂の宿りを感じるっていうか。」
「霊感、強いの?」
「霊感なのかわかんないけど、昔から人形は苦手なんだ。ほら、戦争で焼け野原になったのに人形の箱だけは燃えなかったっていう人形あったでしょ?あの人形はやばかったよ。」
「私たちまだ見るんだから変なこと言っておどかすのやめてよ!」
そんな会話ののち、先生が到着したので私たちは次のお店に行くことになりました。
これまで気にしなかったけど、変な話を聞いたせいで確かになんか気持ち悪いかも・・・そんなことを考えていたのであまり気が乗りません。
何とかお店巡りを終え、最後のお店に到着。
そこの人形は、一度バラバラになったという経験のある人形でした。
なぜバラバラになったかは定かではないそうですが、江戸時代の戦に巻き込まれたという説が一番濃厚だそうです。
その街には昔、お城があり、城下町であるため、平和な反面戦の影響も少なからずあったとか。
首や足ははずれ、着物も破れた人形をご先祖が大切に拾い集め、修理し、髪の毛は人毛を埋め込んできれいに結い直したそうです。お化粧を施し、お歯黒もやり直したと。
この話を聞いたとき、なぜか「生きてる」そう思ったのです。
お店を出たところで、休んでいた男子と合流し、最後の集合場所へ向かうことになりました。
集合場所までは歩いて15分くらい、城下町の雰囲気がいまだに残る町を歩きました。一体この町はどんな町で、どんな人々がどんな生活をしていたのだろう。そんなことを考えていました。
信号待ちに引っ掛かり、立ち止まると反対側に一人の女性が立っていました。霊感とかそういうのないはずなのに、なぜかその女性がすごく気になったのです。
「なんか変だ。」そう思いました。でも何が変なのかわからない。なんか私、今日は変だ。そんなことを考えてました。
埼玉県にある町ですか?