平行世界の学研まんが ――永田鉄山が総理になった世界――
投稿者:山科言継 (1)
私が小学生の頃の体験談。
当時、自宅には寝室にしかクーラーがなかったのもあって、夏休みには涼む目的もあって近所の図書館に入り浸っていた。
その図書館はとても小さいのだが、子供向けのコーナーが充実しており、学習まんががたくさん置いてあった。
たぶん皆心当たりがあると思うが、「学研まんが」と呼ばれる「まんが日本の歴史」とか「まんが○○○のひみつ」とか各偉人の伝記漫画などだ。
当時の私は文字だけの本を読むのが苦手(読書感想文のときしか読まなかったレベル)だったが、この学習まんがの類が大好きで、この図書館の数百冊はあったと思う学研まんがを全部完読して読み返すくらい本の虫だった。(このおかげで成績はトップクラスに良かった)
この数百冊読んだ学研まんがの中に後から思うと奇妙な本が1冊あった。
その学研まんがはいろいろな偉人の短い伝記をオムニバス形式でまとめたもので、その中の一人として「永田鉄山」という陸軍軍人について取り上げられていた。
正直、20年以上経ったのもあって全ページの内容を完全に覚えているわけではないが、印象に残っていたページとして満州事変(支那事変かも)不拡大に尽力したシーンを覚えている。
ともかくまんがの後半で扱われた満州事変~第2次世界大戦の内容としては、永田は陸軍の暴走を止めるために尽力したけど、果たせなかった平和を目指した偉人ですよって内容だった。
そしてまんがの最後はこう〆られていた。
「戦後、永田は短い期間だが総理大臣を務めた」と。
この本の違和感に気づいたのは中学生になった頃。
日本の歴代総理に永田鉄山なんて名前はないと気づいたが、この時はアレッ?と思ったが何もしなかった。単なるまんがのミスだと思ったからだ。
今でも思う。この時にあの本を探しに行けばよかったと。そうすればこんなモヤモヤする思いを抱き続けなかったのではないかと……。
そして大学生になって真実を知ることになる。
架空戦記という小説ジャンルを好きになっていた私は、その小説内の登場人物として永田鉄山という名前に再会した。
ああ、そういえばと小学生の時の記憶を思い出して、何気なくググってみた。
すると、この世界の歴史では満州事件の数年後の1935年に永田鉄山は暗殺されていたのだ。
じゃあ、第2次世界大戦期や戦後に総理になったという記述のあったあの本は何だったのか―――
帰省の際に久しぶりにあの図書館へ向かい、全ての書棚を確認したが、無い。
古くなった本は地下の閉架書庫へ移動したと聞いたのでそれも確認してもらったが、やはり無い。
小学校時代から変わらず勤めていた司書の方に聞いてもそんな本に覚えはないとのこと。
折しも当時は洒落怖とかの全盛期。
その影響もあって、私はひょっとしてあの本は平行世界から紛れこんだ本だったのではないか?そう結論づけた。
できればもう一度読んでみたいなと思いつつ、不思議な体験ではあったが特にオカ板に投稿することもなく、この事はずっと胸にしまい続けた。
だが3日前、ふと気づいてしまった。それ以来自分で自分を構成している要素が不安で不安でたまらない。
ああ、本当に気づかなきゃよかった。
平 行 世 界 か ら 紛 れ 込 ん だ の は 本 の 方 だ っ た の か ?
なんて――――
おもしろい!
ミヨシゲンコウという人が総理大臣になった世界線の話なんかもありますよね
こちらの世界の本もどこかの平行世界に紛れ込むこともあったりして。