学校の七不思議?放課後の「太一くん」
投稿者:蟇 (4)
私が通っていた小学校には、「太一くん」という、学校の七不思議のような話がありました。
「太一くん」というのは、今は使われていない旧体育館に現れる、制服姿の小柄な男の子。
放課後の体育館に2人以上で行き、一番奥の体育倉庫の前で「たーいちくん、あそびーましょ」と声をかけるとどこからともなく現れ、鬼ごっこが始まります。
鬼の役はいつも太一くん。
太一くんから無事に逃げ切り、体育館の外に出られれば勝ち。
ですが途中で太一くんに捕まってしまうと、ひとりぼっちの真っ暗な世界へ連れていかれ、二度と帰ってこられない、という噂でした。
太一くんという子はその昔、学校中からひどいイジメを受け、放課後体育館の二階から飛び降りて命を絶ってしまったそう。
そのため「学校生活を楽しんでいる生徒たち」のことを恨んでおり、仲の良い友達との間を引き裂きにやってくるのだ…という理由が、まことしやかに語り継がれていました。
とはいえ勿論、そんなものはただの作り話。
だって実際に人がいなくなったりすれば、それこそ大騒動になるはずだし、二度と帰ってこられないならどうして連れていかれた後の話を知っている人がいるのでしょうか。
そんなわけで、私は口先では怖がりつつも、「太一くん」の存在など全く信じていませんでした。
ところがある放課後、学校に残って仲良し4人組でおしゃべりをしていた時、ふと誰かが「太一くんと遊んでみようか」と言い出したのです。
季節は夏休み前、丁度テレビでも心霊番組特集などが組まれるシーズン。
ちょっと怖い気持ちもありつつ、みんなやろうやろうとなって、私たちは旧体育館へと向かいました。
今は使用されていないので、一応扉に南京錠はかけられていましたが、扉そのものが崩れているので入るのは簡単。
中に忍び込むとカーテンが閉め切られた体育館の中は薄暗く、むっとするような熱気がこもっていました。
錆だらけの体育倉庫前に立ち、声をそろえて「たーいちくん、あそびーましょ!」と叫びました。
すると一瞬の間の後、倉庫の中からダダダダダダダッ!と何かが近づいてくるような気配を感じ、私は悲鳴を上げて出口へとダッシュ。
続いて2人の友達が飛び出してきましたが、あともう一人、Mちゃんだけが出てきません。
扉から中を覗くと、Mちゃんは倉庫の前でうずくまっていました。
外からいくら呼んでも、Mちゃんは出てきません。
私は先程感じたあの嫌な気配を思い出しましたが、怖いよりも次第に「具合が悪いんじゃないか?」という気持ちが大きくなり、勇気を出してMちゃんのもとに駆け寄りました。
「早く出ようよ!」とMちゃんを揺さぶっても、Mちゃんは私のことなど見えていないように視線をさまよわせ、中々立ってくれません。
追いかけてきた友達と一緒にMちゃんを引きずり出し、周りであたふたしていると用務員のおじさんが通りかかり、私たちはこっぴどく叱られてしまいました。
保健の先生から連絡が行き、お母さんのお迎えで帰宅したMちゃんは、次の日にはいつも通り元気になっていました。
他の2人の友達は、「てんかんっていう持病の発作が出ちゃったみたいで…」という説明を信じているようでしたが、Mちゃんの隣にいた私には聞こえたような気がしたのです。
足跡に続けて聞こえた、「一緒に遊ぼう」という男の子の声が。
無茶苦茶怖い