ベタな学校の怪談には理由がある
投稿者:蟇 (4)
「理科室にはお化けがいる」
「夜、人体模型が動く」
あまりにもベタな学校の怪談です。しかし、いわゆる「ベタ」がベタとして成立するのにはそれなりの理由があるのでしょう。私が通っていた中学校の理科室は最上階の一番奥にあり、少々不気味な雰囲気が漂っていました。私はこの理科室で、あまり怖くはないですが、不思議な体験をしました。
中学二年の夏のことです。確か土曜日だったと記憶しています。私はひとり、理科室で顕微鏡をのぞいていました。植物に真っ赤な色水を吸わせ、その根を切り、断面のどの部分に色が付くか観察するためです。人数の少ない田舎の中学校だったので、自由研究に使う道具を理科の先生が貸してくれたのでした。
ただでさえ人数が少ない学校で、しかも休日に理科室にいるような生徒は自分しかいません。校舎の中は、とても静かでした。吹奏楽部がチューバの練習をしている音が、かすかに聞こえる程度です。曲名はわかりませんが個人的には結構気に入っている音楽でした。
午後になり、吹奏楽部の練習が終わったようです。いよいよ校舎の中には誰もいなくなり、耳がおかしくなりそうなほど静かになりました。静かな理科室に、ひとり。少し気味の悪い感じがしました。早くスケッチをとってさっさと切り上げようと思い、ノートを開きました。
キーン、と音がしました。ノートをめくった拍子にシャーペンを落としてしまったようです。やけに大きく、落とした音が響きました。
身をかがめ、シャーペンを拾います。顔をあげると、そこに居ました。
教卓の隣に、全身真っ黒のジャージを着た、女性。見た目は完全にオバサンです。そのオバサンは、教卓脇の流し台でビーカーを洗っているような仕草をしていました。しかも、一瞬で消えてしまいました。
私以外ほとんど誰も校舎に居ませんでしたし、物音もなく現れ一瞬で消えてしまったので、彼女がお化け・幽霊の類であることは間違いありません。しかし、理科室に現れるお化けといったら、もっと怖い見た目をしているのが相場ってものでしょう!見た目がそこらへんのオバサンって、、、それはないでしょう!しかもビーカーを洗って理科の先生のお手伝いをしているのですから、感心です。
怖いのか怖くないのか、よくわからない、煮え切らない気持ちで理科室を後にしました。
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