二度と泥棒はやらねぇ
投稿者:灰色 (7)
短編
2021/08/20
08:16
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いわゆる3Kと呼ばれる職場で働く知人から聞いた話。
慢性的な人材不足により様々な事情を抱えた職員が働いている。刑期を終えたAは社会復帰を果たし、知人の同僚となった。
Aは意外にも温厚な性格で、知人との共通の趣味もあり打ち解けた。
2人は時折り勤務明けに居酒屋へ足を運ぶことがあり、知人は興味本位で刑務所での生活などを聞いたという。もちろんそれなりに仲が良くなってからである。酔ったAは気分を悪くすることもなく質問に答えた。どうやら彼は居空き専門の泥棒だったようだ。そして興味深いことを口にする。
熱帯夜が続き戸締りも緩みがちな時期はAにとって稼ぎ時である。垣根が目隠しになる民家に目をつけ、無施錠の窓から忍び込んだ。
リビングに置いてあった財布から現金の一部をポケットに押し込み、他の金品を探してあたりを見回す。するとUSBをつけたままスリープ状態になっているパソコンに目を止めた。
物色の痕跡を残さないように余計なものには触らないAだが、この日は何故か気になり、マウスに手を伸ばした。
ロックはされておらず、画面はすぐに表示された。USBの中身が気になり、アクセスした。
残念ながら中身は空だったが、外部デバイス名の表示を見た途端にAは真っ青になり家から逃げ出した。
“盗るな盗るな盗るな盗るな盗…”
「二度と泥棒はやらねぇ…。」
Aはそう呟き酔い潰れたという。
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こういうシンプルなの面白い