もっと生きていたかった
投稿者:mask (1)
私の母は、子供のころから霊感が強かったそうです。
小学生のころ毎晩同じ夢をみて同じ場面で起き金縛りにあったり、学生ころ電車通勤だった母。席に座ると生暖かい感触が足首をまるでつかむような感触に襲われたり…そんな話をいくつも母から聞いていました。
私は当時、車の教習所に通っていました。路上研修でバイパスを走っている最中、教官が「少し前にバイパスで大きい事故あったの知ってる?」と言いました。
私は初めてのバイパス教習でそれどころではなく、そうなんですか?とうわの空で返事をしました。
続けて教官は「俺ちょうどその事故に遭遇しちゃって…まだ若い女の子が血だらけでぐちゃぐちゃになちゃってて、救急車呼ばなきゃって頭ではわかってても怖くて…」と。
正直私は、ちょっとビビらせようとしてるのか?なんて嫌な教官、と思いながらどこか他人事のように「実際遭遇すると怖いですよね」と返事をしました。
教習も無事に終わり、教官の話など忘れて私は過ごしていました。
そんなある日、私と母は二つ離れた市にあるショッピングモールに行こうと母の運転で向かっていました。
左側に、トラックなどが駐停車して休憩できる少し広いスペースがあり、その入り口に花やお菓子が供えてありました。私は事故があったんだな、怖いな…と思いっていました。
その場所から少し遠のいたところで、運転していた母が急に号泣しだすではありませんか。私は何が何だか分からなく、「どうしたの?体調悪いの?大丈夫?」と声をかけ、気づきました。次に私は「なんか聞こえたの?」と母に聞きました。そうしたら母は、涙を流しながらうなずきました。そして嗚咽しながら母はこう続けました。
「もっと、生きていたかった」
「なんで私なの」
「たすけて」
母は、落ち着かせるためにな何度も深呼吸しました。
そしてショッピングモールにつく頃にやっと落ち着き、「ごめんね、お花があるの分かったんだけど油断したら入ってきちゃったよ」と。
私は気になることがあったので、聞いちゃいけないかなと思いつつ母に「それは若い女の子?」と聞き「そう、あんたよりちょっと若いくらいの」と。
そこで私はある話を思い出しました。
教習所の教官が遭遇した事故ってこの事故のことだったのか…?
思い返してみれば、教官がその話をしたのもあの辺りでした。私は今までにないほどぞっとし、それと同時に言葉にできない感情が込み上げ、交通事故の恐ろしさを感じました。
免許を取得することができ、バイパスのあの道を通るたびに私は事故のことを今でも思い出します。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。