子供の頃の話だ。
東北の田舎にある小さな村で私は育った。
村には消防団の屯所があり、そこは屯所の他に公民館としても使用されていた。
木造二階建ての古い建物。
床はミシミシと音を立て、砂壁もポロポロと剥がれ落ち、雨漏りの跡が不気味に残っていた。
夏休みや冬休みになると、2階に学校から運ばれた本が並び、簡易的な図書館のようになっていた。
朝のラジオ体操が終わると、みんなでそこに移動し本を借りる。
ある日のことだった。
寺の庭先でのラジオ体操を終え、近くにある屯所に向かっていた。
不意に先頭にいた小学生1年生の男の子が足を止め「あれ!」と屯所を指差した。
後ろを歩いていた私と幼馴染も足を止め、指差す方向を見る。
2階の窓に人がいる。
水色の浴衣のようなものを着た、髪の長い青白い顔の女。
窓枠を両手で掴み、上半身だけを窓の外に出しジッとこちらを見つめる。
小さな村。
知らない人間などいない。
「幽霊だ!」
全員が騒ぎ始める。
6年生の女の子が「お寺の人を呼んでくる!」と言い、来た道を戻って行く。
その間、全員でその女の様子を伺う。
幼馴染が呟く。
「あの、着物って◯◯舞の時に着るやつじゃない?」
◯◯舞。
地元に伝わる伝統的な舞。
お祭りやお盆などに踊られるその舞。
普段は屯所の物置に衣装が保管されていた。
女の子が住職を連れて戻ってくる。
「おお、これはこれは……」
そう言い、手を合わせ念仏を唱え始める住職。
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