あの女学生は今、元気だろうか。
あの女学生がいなくなってから、高専はがらんと姿を変えてしまった。休み時間になっても、教室から笑う声がぴたりと聞こえなくなった。以前はうるさいくらいだった廊下が、今では自分の足音だけが響くほど静まり返っている。すれ違う生徒たちは、みんなどこか活気がなく、目を伏せて足早に通り過ぎていく。誰も大声を出さない。誰も走らない。まるで、大きな音を立てることを、みんなで避けているかのように。
以前は私も、もう少し面白い話ができた気がする。生徒たちが笑ってくれるような、他愛のない雑談を。今はもう、何を話しても、誰も笑わない。声を出すことさえ躊躇うような、重い沈黙が教室に張りついている。
あのけらけらと笑う笑顔が消えてから、何もかもが変わってしまった。私は助けられなかった。学校もうまく回らなくなった。高専なら就活がうまくいくはずなのに、誰もうまくいかない。どうしてだろうか。
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6月18日、面談室でのことだった。
「先生、私は病気ですか?」
彼女がそう聞いてきたときのことを、今もはっきり覚えている。いつものけらけらとした笑顔はどこにもなく、まっすぐに私の目を見て、まるで本気で何かを訴えているようだった。
「私最近変なんです。友達の心が透けて見えるような気がして、嫌われ始めてる気がするんです。先生、私は統合失調症なのでしょうか?」
正直に言えば、あのときの彼女は、病気にしか見えなかった。思い詰めた目、早口になる言葉、震える指先。私はその様子を見ながら、どう返せばいいのか分からず、ただ黙って彼女を見つめることしかできなかった。
私はなんとも答えられなかった。
同じ日の、面談の終わりがけだった。彼女はふと、口調を変えてこう言った。
「先生。今後、この高専に悪い噂が立って、ここからの就活がうまくいかなくなるかもしれません」
さっきまでの思い詰めた様子とは、また違っていた。まるで、精神を病んでいるというより、何か別のものに取り憑かれてでもいるような、据わった目をしていた。声も、彼女自身のものではないような、妙に平坦な響きだった。
当時の私には、それがただの被害妄想としか思えなかった。学校の評判が悪くなるなんて、根拠のない話だと。
私は、これ以上関わってしまえば、彼女の病状を悪化させるだけだと思った。だから、ちょうど鳴った次の授業のチャイムに救われるように、「また今度ゆっくり聞くから」とだけ言って、面談室を出た。
あの言葉の本当の意味がわかったのは、ずっとあとになってからだった。
「今度」は、結局来なかった。
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それから数か月後、就職課の会議で、思いがけずその話を聞くことになった。
「今年に入ってから、うちの学生、面接でおかしな質問をされることが増えてるんです」
就職課の教員が、困惑した顔で資料を配りながら言った。2025年——彼女が退学した年から、ほぼすべての企業の面接で、判で押したように同じような質問をされているという。
「あなたの在籍している高専に胸を張って、堂々と卒業できますか。もしも業界で何か悪い噂が流れていたとしても」
学生たちは、何を問われているのか分からないまま、しどろもどろになり、次々と落とされていく。悪い噂など、誰も心当たりがない。ただ、質問だけが、まるで台本のように、企業ごとに違うはずの面接官の口から、同じ言葉でこぼれてくる。
会議室の空気が、遠くかすんでいくのを感じた。私は、あの日の面談室を思い出していた。据わった目をして、平坦な声でそう言った、あの子のことを。
あれは、被害妄想などではなかったのだ。
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寮の見回りをしていたときだった。彼女のことを思い出すと、急にガタン、と何か軽いものが落ちるような音が、どこからか聞こえた。
元担任をしていた彼女の部屋——今はもう誰も使っていない。廊下はほぼ真っ暗で、非常灯の緑色の光だけが、点々と足元を照らしていた。近づくと、背中がぞわっとして、足がすくんだ。
ドアの向こうから、うっすらと、あの懐かしい笑い声が聞こえた気がした。けらけらと、あの子がよく笑っていたときの声そのままに。
























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