質屋のショーウィンドウに、管楽器が並んだ。
トランペット、サックス、トロンボーン、チューバ。磨かれた真鍮が、冬の陽に鈍く光っている。その隣に、猟銃が数挺。銃身は黒く、楽器よりも静かだった。
「客層がちぐはぐだな」
通りすがりの男が言う。
「そうでもない」
店主はガラスを拭きながら答えた。
「まず誰かが楽器を買う。たいていは越してきたばかりの家族だ。子どもが音を出す。窓を閉めても、意外と響く」
男は曖昧にうなずく。
「すると数日後、別の客が来る。楽器には目もくれず、銃だけを見ていく。用途は聞かない。うちは質屋だ」
店主は銃を一本、そっと並べ直した。
「で、その銃は売れるのか」
「売れるとも。だが面白いのはそこじゃない」
店主はショーケースの端を指で叩いた。
「銃が売れると、今度は防犯カメラが質に入る。次に防音材。引っ越し費用のための腕時計。弁護士費用のための指輪。順番は違っても、だいたい同じだ」
男は顔をしかめた。
「何が起きてるんだ」
店主は肩をすくめる。
「知らない。ただ、並べるだけだ。楽器と銃は、よく動く」
そのとき、若い夫婦が店に入ってきた。父親らしい男はトランペットを手に取り、母親は価格札を見ている。店主は微笑んでケースを開けた。
通りの向かいでは、別の男が立ち止まり、銃の列をじっと見つめていた。
ガラス越しに、二組の視線が一瞬だけ重なった。
質屋は静かに帳簿を閉じる。
売れ筋は、決まっている。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 0票
関連タグ:
#事故物件
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。