これは今21歳の俺が10歳の時に体験した話だ。
俺のクラスメイトには変な奴がいた。
そいつは佐原花という奴で右頬の一部がなくて当然だが、そこはへこんだ状態になってて、しかもずっと笑ってるきみの悪い人間だった。
でも逆にそんな奴だったため、俺は何で顔がへこんでいるのか気になり、頻繁に話すようになった。
そいつは見た目に反し、意外にも優しくて面白い奴で、話が合うようになり、いつのまにか仲良しになっていた。
それから仲が良くなって数日後、ずっと気になっていた何故顔がへこんでいるのかを放課後、一緒に帰っているときに聞くと、佐原は今まで見たことがないぐらいニタニタした笑顔になり、うちに来る?と俺に対して言った。
当然俺はそれに乗っかり、佐原の家に行くことにした、そして佐原といつもと同じように他愛のない話をすること十数分後、俺と佐原は佐原の家に着いたのだが、俺は衝撃で口をポカーンと開けていた。
そこは信じられないぐらいボロい一軒家で、幾つもの植物がひびができた壁の中から生えていた。
しかし、佐原はそんなことを気にも止めず、ランドセルに付けていた鍵を手に取り、玄関のドアを開けた。
そして、家に上がると、早速俺は家に入った時と同じような衝撃を受ける、そこには天井からテープで貼り付けたありがとうと書かれた巨大な横長の紙と更にその紙に貼り付けられた佐原とその佐原の両親らしき顔がへこんだ男女の写真があった。
そんなものを見て恐怖を感じている俺に対し、佐原は素敵でしょ?と笑みを浮かべて言った。
何をされるか分からない、そんな状況であったため、俺は咄嗟に佐原に言われたことに対し肯定の言葉を送った。
そうすると佐原は口が裂けるんじゃないかとぐらい笑顔になる。
そうしていると、一つのことに気づく、今いる玄関以外は照明がついていない。
そんなことに俺は今更気づく、そうしていると、佐原は玄関から真っ直ぐにあるリビングの明かりをつける。
そして、佐原は無理矢理おれの目を隠しながら手を引っ張り、リビングに連れていく。
佐原が歩けば歩くほど、「〜様!〜様!
」と言う声と何かが腐ったような匂いがしてくる。
佐原は足を止めるとおれの目を隠した手をどけて、じゃーん!と言う。
それを見た途端、おれは腰を抜かして、表情筋の一つも動かせなくなる。
リビングには誰かわからないモノクロの写真が玄関の紙と同じように天井から吊るされており、また写真の後ろにあるリビングの椅子にはタライがあるのだが、そのタライの中、そこには
紫色になった肉の塊のようなものがあった。
そして、その時には声がはっきりと聞こえていた。
「佐原裕様!佐原裕様!佐原裕様!」
今目の前にいる佐原とは違う名前の佐原を唱える声それは、タライと同じく椅子に置かれていた壊れかけのラジカセからしていた。
そんなものを見て喋ることすらできない俺を佐原は先ほどより更に不気味な笑みを浮かべ、まるで漫才を見ているかのように、手を叩き笑う。
慌てた俺は地面を這いながら家から出ようとする、そんな俺を見た佐原は笑い声を上げながら、足を掴む、咄嗟に俺はこの恐怖から逃げ出したいという本能により、立ち上がり、家から出ていく。
それから数日後、佐原は引越し、5年ぐらい経った時には俺も忘れていた。
じゃあ何で思い出したのか?答えは明白だ。
あの佐原の家の玄関にあった紙、それに何故あるかわからない俺の写真が追加されたもの、それが一日前、俺の玄関のドアに貼られたからだ。
























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