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心霊

たけしろのみやさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ジムに来る変な人
短編 2025/12/25 21:39 146view

私は朝が早い仕事に就いている。その分昼過ぎには退勤することができるのだが、早い時間に帰ってもあまりやることも無く暇を持て余すことが多かった。

ある時職場のすぐ近くにフィットネスジムができた。私は早速通ってみることにし、それからは仕事終わりにジムに寄ってから帰るのが日課となった。

ジムに通い始めて2年ほど経ったころだろうか。

そのジムは24時間営業であり、深夜の一部時間を除いてはスタッフが常駐している。
ただし火曜日だけは例外であり、14時以降はスタッフ不在となる。

これはそんな火曜日の話である。
私が仕事を終え、13時半ごろにジムへ行くとジム内には1人の顔見知りのスタッフ以外誰もいなかった。そのスタッフも帰るための後片付けをしている様子だ。
いくら平日の昼間とは言え、誰もいないというのは珍しい。

とは言え貸切状態というのも悪くないと早速トレーニングを始めた。
14時になるころ、私服に着替えたスタッフが声をかけてくる。
「お疲れ様です。あの、私はこれから帰るんですけれど…。」

そこまで言って言葉をとめる。
「どうかしました?」
私は先を促した。
「変なことを言うんですけれど、もしこれから15時になるまでに誰も来ないとしたら少し気をつけてほしいことがあるんです。」
「え、どういうことですか?」
私にはまだ会話の出口が見えない。
「あのですね、時々お客さんから”自分以外誰もいない火曜日の15時に変な人が入って来ようとする”っていう話を聞くんです。」
「はあ…それはどんな人なんですか?」
「入口の自動ドアの前にじっと立ってこちらを覗いて来るそうなんです。ただ私達スタッフは誰も見たことが無いので詳しいことは分からないんです。」
スタッフは気味の悪そうな顔を浮かべた。私も同じ表情をしていたに違いない。
「ただ入口のドアはジムの会員でないと開かないですし、その人もしばらくすると居なくなるそうです。ですので、もし何かされたり言われたりしても内側から開けて中に入れたりはしないでいいでふすからね。」

「分かりました。私もなるべく早く帰るようにしますよ。」
「すみません、ご迷惑をおかけします。」
そう言ってそのスタッフは帰って言った。確かに気味の悪い話ではある。ただ1時間もあれば誰かしらは来るだろうと考え、私は時計をあまり気にせずトレーニングに没頭した。

ピンポーン
突然ジム内にインターホンの音が響く。
これは新規入会の人やジム見学の人が中に入るためにスタッフへ呼びかけるためのものだ。ただ現在ジムには対応すべきスタッフがいない。
ピンポーン
もう一度インターホンが鳴った。
私はスタッフがいないと伝えるべきかと入口の方へ目をやる。
そこに男が立っていた。
分厚い灰色のトレーナーを着て、薄汚れたジーパンを履いた背の高い男だ。

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