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妖怪・風習・伝奇

はったろさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

爺ちゃんと婆ちゃんが体験した話
長編 2025/11/09 23:41 1,383view
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俺の爺ちゃんと婆ちゃんがが今から五十年ほど前に体験した話。

俺の住んでる田舎は四国にある。面積が広く四方を山に囲まれた町で町の真ん中を大きな川が流れてる大きな川の支流を遡ると俺が住んでいる集落がある。古くから林業が盛んで昔は支流から木を流してその大きな川で河口まで運んだらしい。(祖父談)。また平家の落人の伝説もある。周りは山で田んぼがたくさんあり柚子の木もたくさんあった俺はそこで生まれ育った、地元の小中学校までは十数キロもあるような場所だ。俺は爺ちゃんと婆ちゃんが大好きだった。小さい頃に父と母が離婚して父方のこの家に来た、それから保育園から高校生まで大きくしてくれたのは婆ちゃんで今も頭が上がらない。爺ちゃんも俺が小学生の時に亡くなったがよく三輪車を押してくれたのと鍵を剥いでくれたのを覚えている。前置きが長くなったがそんな爺ちゃんと婆ちゃんが体験した話。昭和五十年代、うちは近隣の集落の中でも2番目くらいに山を持ってたからその山で林業をして生活していた。婆ちゃんは女ながらに赤ちゃんだった親父をひい婆ちゃんに預けて爺ちゃんと山に行っていたそうだ。山に行くのはいつも三人。爺ちゃんと婆ちゃんと川田のおっちゃん。この川田のおっちゃんと言う人はひいじいちゃんの従兄弟でうちで雇っていたらしい。この三人でいつも山に行っていた。おばけ?とか言う軽トラの上ぶった斬ったやつ?みたいなのに乗って山まで行ってたって。その日はちょっと奥の方の山まで行くことになったらしい、その前にも何度か行った事はあるらしいが『あんまりさっぱりせんとこやった』と婆ちゃんが話しながら言っていた。婆ちゃんと爺ちゃん川田のおっちゃんは山をずっと登って行ったらしい。途中で道が途切れておばけが乗れなくなり歩いて登り山頂に着くと小さな祠があったらしい。山頂まではお婆ちゃんも行った事がなかったらしくなんでこんなところに?と思ったらしいが気にせずに作業をしたらしい。夕方近くになり『そろそろかえらんか』と言う爺ちゃんに対し、もう少しで作業が終わるところだった婆ちゃんは『あともう少しやから』と作業を続けたらしい。作業が終わる頃には辺りはすでに暗くなり始めていた。慣れているところなので急ぎはしないが内心焦っていたらしい、三人で山を下っていると爺ちゃんが急に立ち止まりジェスチャーでしゃがめと言ったらしい、辺りはもうほとんど暗くなっており何事かと聞く婆ちゃんに対し爺ちゃんは『しっ!』と人差し指を口に当てた。その時には婆ちゃんにも川田のおっちゃんにも何故『しっ』と言ったのか意味がわかるようになったらしい。声が聞こえるのだ。『アァ…ァァ…ァァ…』とその声は少し遠くから聞こえる。婆ちゃんが小声で『この声はなんぞ?』爺ちゃん『今ここで説明しやる時間はない』妙に緊張している声音だったそうです。後ろの川田のおっちゃんを見ると顔が青ざめていました。すると爺ちゃんが『〇〇〇、儂はおっちゃんと見てくるけんここにおれよ』と背中に負っていた荷物を下ろし鉈を腰にぶら下げながら『もしも30分経って戻ってこんかったら走って山降りて在所のしら呼んでこい』と言ったそうですその時婆ちゃんは怖くて震えていたらしい。川田のおっちゃんと爺ちゃんが行ってからどれくらい経ったでしょうか、風の音に混じって後ろから枝を踏むようなパキッ…パキッ…っと言う音が聞こえてきたそうです。爺ちゃんだと思ったお婆ちゃんは見てしまいましたそのモノを…10メートルぐらい先にのそこにいたのは爺ちゃんではなく人の形をしているのですが髪はボサボサで色白の目がひとつしかなくその目も黒目で口が耳まで裂けて口の端から血を滴らせているいる異形なモノでした。その姿を見たお婆ちゃんは声が出ず体も動かなかったそうです。どんどん近づいてくるそれに対して体は金縛りのように固まり身動きが取れません。その時背後から女の人の声で『早くお逃げなさい』と聞こえ、その声で婆ちゃんは金縛りが解けて荷物を置いて逃げました。一目散に山の斜面を傷だらけになりながら下っていると後ろから『待てェェェェェェェェェェェ!!!!!!』のような老婆の雄叫びとドタドタと言った足音が聞こえてきました。婆ちゃんは超がつくほど足が遅いのですがこの時ばかりは火事場の馬鹿力と言わんばかりに早く走れたそうです。ようやくおばけを止めた道まで来ると爺ちゃんと川田のおっちゃんがおばけで待っており、『早う!』と叫んでいます。婆ちゃんが必死に乗り込むと爺ちゃんは細い山道を全速力で駆け下りました。しかし後ろからはなおも、『待てぇェェェェェェ!!』と言う声と足音がついてきます。ようやく在所の明かりが見えてくるとその音と声も聞こえなくなりました。三人は急いで家に帰るとひい爺ちゃんに『親父!アレが出た!〇〇(地名)にやつがおった!』その言葉にひい爺ちゃんは険しい顔になりすぐに家にあった猟銃をもって在所中に知らせに行きました。その時婆ちゃんは家に着いた安心感と疲労感で寝てしまったそうです。次の日目が覚めると布団に寝かされておりひい婆ちゃんから災難だったねぇ…と言われたそうです。起き上がって庭を見ると在所の男性たちが皆猟銃を担いで集まっているではありませんか、その中には爺ちゃんと川田のおっちゃんもいました。その時一台の車が来て神主さんのような人が降りてきました。話を聞いている限りあの山へみんなで行くそうです。その間集落の女子供は一ヶ所に集められ神主さんが帰ってくるまで絶対に外には出てはいけないそうでした。男達は爺ちゃんと川田のおっちゃんを先頭に山へ行ってしまいました。帰りを待つ間、婆ちゃんがひい婆ちゃんにこのことについて聞いたそうです、あの山には何かあるのかと、ひい婆ちゃんは渋っていたようですが淡々と話し出しました。要約するとあの山には昔から人を食う化け物がおって、山に入る人間を片っ端から食っていた、それに困り果てた集落の有力な家(うち、もう一軒、もう一軒)が徳の高い山伏を呼んでそれを山の祠を鎮めていたらしい。でその山伏子孫が代々管理していたらしいが、明治の時北海道に出て行ってから祠は管理されずにいた。それからも度々人がいなくなったらしい。一人で行くと襲われるから二人以上で行くことが絶対らしい、しかし今回の出来事でそれも効果がないとわかり神主を呼んでしっかり封印してもらおうとなったらしい。

夕方になって爺ちゃん達が帰ってきたら。爺ちゃん曰く『もう終わったとのこと』山を登っていると昨日置いてきた荷物が全てボロボロになっていたこと、白髪がたくさん落ちていたことなどを話してくれた。ちゃんと封印したからもう大丈夫らしい。それからは爺ちゃんと婆ちゃんがその場所に行っても何も起こらなかったそうです。婆ちゃんは一つ気になることがあり爺ちゃんに話しました『私が見られて動けんかった時に女の人の声で早くにげなさいて女の人の声で言われたんやけど』爺ちゃんは考えて『それはお鶴さんやないか?お鶴さんが助けてくれたんじょ』お鶴さんとはこの集落に伝わる平家の落人伝説に出てくる人で子供を守るために追っ手に殺された人です。

爺ちゃん曰く、『お鶴さんも母親やから赤子がおるお前のことを助けたんやないか』とのことらしい。それから婆ちゃんは山に入る時はお鶴さんに必ず参るようになったそうです。この前お鶴さんの祠の建て替えがあったのでお婆ちゃんが話してくれました。長文駄文失礼しました。

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