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ヒトコワ

大鷹恵さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

リサイクルショップからの帰りに・・・
長編 2025/09/27 10:20 1,112view

「あ、こんなところにリサイクルショップができているのか?」
仕事からの帰り、ホンダ・クイントを走らせていた俺は新しくできているリサイクルショップの近くにクロスロードを駐車させると、リサイクルショップの中へと入る。そこにはCD、DVD、VHS、古本、ゲームソフト等があった。俺は財布の中を調べて、
「これだけあれば、古本が買えるか・・・」
と古本コーナーを歩く。
「あ、大藪春彦の大長編「アスファルトの虎」が全14巻あるじゃないか?番外編である「凶獣の罠」もあるし、この際だから買っておくか。「アスファルトの虎」は復刊する事自体が当分なさそうだし(そもそも、「アスファルトの虎」の展開自体がモータースポーツ、田口軍団から引き受けた裏の仕事、チームのスポンサー探しとシチュエーションの繰り返しなのだ。女性を主人公にした「女豹」シリーズ、無限ループ過ぎて悪名高い「餓狼の弾痕」と並び大藪入門書には向かない作品である)。他には「処刑の掟」や「傭兵たちの挽歌」「復讐の弾道」「沈黙の刺客」「殺人許可書NO3」「裁くのは俺だ」「名前のない男」「ウインチェスターM70」「非情の標的」「男の掟」もあるな。ちょうどいいから全部買っておくか」
俺は大藪春彦の文庫やノベルスを手に取り、レジの方へと向かう。レジには若い店員がいた。
「お客さん。大藪春彦が好きなのかい?全26冊も買って・・・」
「ああ。そーゆーあんたも大藪春彦が好きなのかい?」
「いや、このリサイクルショップで大藪春彦の本を大量購入している中学生くらいの男の子がいつも来るんだよ。今日もお客さんがここに来る10分前に大藪春彦の小説を購入していたんだ」
「へぇ、今どき中学生くらいの男の子が大藪春彦を読むなんて珍しいな」
「他にも、西村寿行や森村誠一、筒井康隆、小松左京の小説も大量に購入していたな」
「ふぅん、変わっているな、その子。まぁ俺も西村寿行の小説も好きなんだけどね。なぁ店員さん。もしその中学生がまたリサイクルショップに来たら、俺に連絡してくれよ。それと店員さん、出来たら、その男の子に「大藪春彦や西村寿行について話したい」と伝えておいてくれよな」
俺はレジに電話番号が書かれたメモを置く。
「OK」
俺は会計を終えると、リサイクルショップを出る。そこに
「ちょっと、あなた」
と俺を呼びかける声が聞こえる。俺は後ろを振り向くとセーラー服を着た黒髪ボブカットの女の子が立っていた。
「どうかしたのか?」
「あなたが持っている大藪春彦の本を全部私に渡しなさい」
「はい?」

「その本は全部曰く付きの代物なのよ。それを持っていたらあなたは不幸になるわ」
「・・・」
「答えはYES?はい?」
「悪いが、俺にはNEINという選択肢しかない。じゃあな」
俺は女の子を無視して、ホンダ・クイントに乗り込む。俺はクイントのエンジンをかけ、その場から走り去っていく。
「いったい何者なんだあの女・・・」
俺はそう思っていながら、メーターを見た。
「あ、ヤバいな。ガソリンがなくなりかけている。ガソリンを入れて買えるか」
俺は近くのガソリンスタンドに停車した。ガソリンスタンドの店員に
「満タンにしてくれ」
と言う。俺は煙草を吸いながら、ガソリンが満タンになるのを待った。
「家に帰って、大藪春彦の小説でも読みますか!」
俺はそう言った時、
「ちょっとお客さん、店の方まで来てくれ」
ガソリンスタンドの店員と俺に話す。俺は店内へと入る。ガソリンスタンドの店員は鍵を閉めた。
「おいおい、どうしたんだよ?」
「あんたのクロスロードの後部座席にナイフを持った黒髪ボブカットの女の子がいるんだ!」
ガソリンスタンドの店員は真っ青な顔で俺に告げた。俺は窓からクイントの方を見た。女の子は車内を物色しているようだ。俺はスマホを取り出し、クイントの方を動画撮影する。ガソリンスタンドの店員は
「やべぇ、俺。ウンコしたくなったわ」
と言って、トイレの方に向かう。その時、ノートPCから突然、

「ゆっくりの怖い話~」
とオルゴール系BGMとゆっくり音声が流れだす。俺はノートPCの方を見ると画面にはYouTubeで投稿されている「ゆっくりの怖い話【2ch怖噺】」が流れていた。動画のタイトルは
「【2ch怖い話】リサイクルショップで見つけた大藪春彦の小説本【ゆっくり】」
であった。大まかなあらすじはこうだ。主人公が学校から愛車で帰る途中、見知らぬリサイクルショップで大藪春彦の小説本を購入し、ガソリンスタンドに立ち寄った時にガソリンスタンドの店員から
「後部座席にナイフを持った女がいる!」
と告げられるものであった。俺は
「あれ?今俺が体験している事じゃないか!」
と驚きが隠せなかった。その時、ガソリンスタンドの店員がトイレから戻ってきた。ちなみに店員は店長から
「電気代をケチるように」
と指示されトイレに電気をつけないようにしているという。ガソリンスタンドの店員はスマホで警察に連絡をする。俺は店員に
「悪いが用を足してくるから、俺のクイントの方を見張ってくれ」
と告げ、トイレに向かう。トイレは電気がついておらず真っ暗であった。俺は電気をつけた。
「!」
そこには血まみれの男子中学生の死体が見つかった。トイレの床には俺が行ったリサイクルショップのビニール袋が捨てられていた。男子中学生の口に大藪春彦の初期作品「血の罠」の文庫本がねじ込まれていた(これは俺の憶測になるが、殺された中学生はリサイクルショップで大藪春彦の小説本を購入していたやつかもしれないと思った)。トイレの壁には
「電気をつけなくてよかったな」
と青いペンキで書かれていた。外からパトカーの音が聞こえる。俺と店員はガソリンスタンドを出て、パトカーの所に行こうとした時、ノートPCから
「ゆっくりの怖い話~」
とオルゴール系BGMとゆっくり音声が流れだす。言うまでもないが「ゆっくりの怖い話【2ch怖噺】」の動画である。俺は思わず動画を見る。動画は1分前に投稿されたものであった。動画のタイトルは
「【2ch怖い話】ガソリンスタンドのトイレの電気をつけたら・・・【ゆっくり】」
であった。俺は恐る恐る動画を見る。内容は俺がさっき、トイレで体験した怖い話にそっくりであった。

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