どこか遠くから聞こえる細かい振動音。
一定間隔で聞こえるその振動音がスマホのバイブ音だと気付く頃には私の目はすっかり覚めてしまっていた。
視線をベッドの隣のサイドテーブルに置いたスマホに移す。
それとほぼ同時にスマホの振動も止まった。
振動が誰かからの着信によるものだということはバイブの種類で分かってはいたが、時間に納得がいかなかった。
深夜3時である。こんな時間に誰が電話をしてくるのか。
もしかしたら両親や友人からの緊急の電話かもしれないという考えがふとよぎりスマホを手に取った。
暗闇の中自分の顔を照らす画面の光に顔をしかめながら着信通知を確認する。
そこに映されたのは全く知らない番号だった。
+81に続き表示される身に覚えのない番号。
たしか+81が付く番号は海外からの着信と聞いたことがあるような気もする。いや国内からでもこう表示されることがあるとも聞いた様な。
ただそれよりも違和感を覚えたのはその着信の数だった。
通知をタップして表示された履歴の数はざっと数えても20件を超えていた。
1時を皮切りにほぼ5分おきに同じ番号から着信が入っている。
「なにこれ気持ち悪…」
思わず呟きながら、視線を画面の端に移すと留守番電話の欄に①と赤く数字が表示されていた。
留守番電話の録音が入っている。
それも自分が目が覚めたついさっきの着信時に録音されたものだった。
最近のスマホには文字起こしの機能がある。
録音を実際に聞かなくてもスマホ側がその音声を聞き取って文章として表示してくれるのだ。
通知を押して文字起こしの文章を確認してみる。
“文おくに失礼いたします。
私のと申します。で待って申し訳ありません。ストではありません。帰りを待たないでください。だけです。ごめんなさい。子を巻いたらだめです。帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽帽ぼおやすみなさい。”
文字起こしの機能は完璧ではない。相手の声が小さすぎたり周りの雑音が原因で本来の内容と違う文章になってしまうことがしばしばある。
今回の文字起こしもおそらくそうなのだろうという印象を受けた。
ただ内容的に相手がこちらに何かを伝える目的で電話をかけていることは明らかだった。
気味が悪かったが、内容がどうしても気になった私は録音再生のボタンをタップした。
『——–夜分遅くに失礼いたします。
私ザアァァァと申します。』
肝心の名前の部分に大きな雑音が入る。ただ声質から女性だということは分かった。
























暗闇の中で更に目を開けられない状況って、それだけで普通は耐えられないくらい恐ろしい。
最後はどういう意味なんだろう?
めちゃくちゃ寝癖付いてたんかな。