昔、コンビニの深夜バイトをしてたことがある。
この話はそこで出会った先輩から聞いた話だ。
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「うぃーす」
バックヤードの扉が勢い良く開き、長身のスキニーデニムが颯爽と入ってきた。
石谷先輩だ。
「相変わらず早いねぇ。真面目かよ〜 」
時刻は午前2時7分。先輩は2時からのシフトだから、7分遅刻という事になる。
“もちろん”既に俺が先輩のタイムカードは切ってある。
石谷先輩はそんなこと知らないと言わんばかりに長いまつ毛をぱちくりさせながらこちらを見つめている。
相変わらず”顔だけは”綺麗な人だ。
「先輩がいつも遅いから、俺はちゃんと来ないとダメなんですよ。」
視線をスマホに落として、ぶっきらぼうに言う俺に、先輩はいつもみたいに捲し立てる。
「何言ってんだ、私は今日だけ”たまたま”遅刻しただけだ。合コンが思ってたよりいい感じだったからな」
先輩は美人だが、モテない。
その理由が大雑把すぎる性格にあるってことは、敢えて先輩には言わないことにしている。
「あ、そうだ。とっておきの話があるぞ。今日のはとびきりだ。」
「またですか… 正直帰り道が怖くなるからもう嫌なんですけど……」
このコンビニはこの時間、ほとんど人が来ない。
そういう時、先輩はどこから拾ってきたのか分からない怪談をいつも僕に披露する。
俺は怖がりだから、いつもビビってしまって、それを見た先輩が大喜びする。そんなことが今まで何度もあった。
「ははは、山田のリアクションは最高だから、虐めたくもなるだろ。 まぁ、でも今日のはガチだ。」
急に真剣な顔をする先輩。
まずい。これは本当に怖い時の奴だ。だりぃ……

























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