姿勢を正した俺を見て、ふぅ、と一息つき、口を開いた。
「……なぜこの時間のこの店舗が、シフト二人体制なのか知ってるか?」
「え?先輩が遅刻魔だからですか?」
バシン!と、渾身のグーを食らう俺。
流石に度が過ぎた発言だったようだ。
「痛ぇ…… すみません、頭が高かったです……」
「まぁ分かればいいさ。分かれば。んで、なんで二人体制だと思う?」
確かに、こんなに人が来ないのなら、1人でも充分に対応可能だろう。むしろ、2人雇うことで人件費は丸損のはず。そこまで深くは考えたことがなかった。
「えっと……分からないです……」
「……このコンビニ、実はいわく付きみたいなんだ。」
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この辺りは原爆の被害がでかかったのは知ってるよな?
爆心地からそう遠くないし当然なんだがな。
んで、このコンビニがある場所は戦時中、一軒家が立っていたそうだ。夫婦二人が住んでいてな。旦那の方は前線に駆り出されて、奥さんが一人で家を守っていたそうだ。
たった一人で、いつ帰るか、そもそも生きて帰ってくるかも分からない旦那を、ずっと懸命に待っていたんだ。
そこに無慈悲にもB29が飛んできて、原子爆弾を落とした。その家は一瞬にして吹き飛んでった。
奥さんも死んだ。
そこから月日がたって、この土地に建った家は事故物件になった。なんでも、自殺者が後を絶たないらしい。
私が集めた情報によると、1人暮らしの人はもれなく死んでた。なんでも、1人で家にいると、出るんだと。
女の霊が。
あなたじゃない……そう言われるんだ。初めのうちは。
それからどんどんエスカレートしていって、最後は……
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続きを遮るように、聞き馴染みのあるメロディが鳴った。うちのコンビニの入店音だ。
どうやら、誰か客が入ってきたみたいだ。


























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