知人から聞いた話です。
知人が小学生の頃、引っ越し前の家の近くにゴミ屋敷がありました。
庭付きの2階建ての家で、庭には黒いゴミ袋や青いビニールシートで包まれた粗大ゴミがありました。
その家にはお婆さんが住んでいて、知人は何度か見かけたことがありましたが、身なりは普通のお婆さんだったそうです。
ゴミ屋敷の住人というと周囲から嫌われそうですが、近所の人たちは優しく接していました。
ゴミ屋敷を怖がっていたのは、子どもたちくらいだったようです。
ある日、そのお婆さんが病気で亡くなったと、知人の母が話していました。住人がいなくなり、庭はさらに荒れて不気味な雰囲気になったせいか、家に幽霊が出るという噂が広まりました。
「窓から死んだお婆さんが覗いている」「風呂場に死体の入ったビニール袋がある」といった話です。
その噂を聞いて、知人の友人AとBがゴミ屋敷を探検しようと言い出しました。知人は気が進みませんでしたが、怖がっているとからかわれたくなくて、しぶしぶ参加しました。
学校が終わった後、3人は一度家に帰り、夕方にゴミ屋敷の前で集合しました。
庭は雑草が伸び放題で、ゴミ袋は草に埋もれ、粗大ゴミにはツタが絡まっていました。
友人Aが玄関のドアをガチャガチャと試しましたが、開きません。
知人は「もう諦めてくれないかな」と願いましたが、Aはすぐに窓に移動し、一つずつ開くか確認しました。
すると、1つの窓がスルリと開いたのです。
Aは喜んで家に飛び込み、知人は怖がりながらもBと一緒に中へ踏み込みました。
そこはお婆さんの部屋らしく、鏡台やベッドがあり、趣味で作ったらしい切り絵が飾られていました。
知人の祖母の部屋と変わらない、普通の部屋でした。
「この部屋、ゴミがないね」とBが言うと、知人も同じことを感じました。
ゴミ屋敷と聞いていたので、悪臭漂うゴミだらけの家を想像していた知人は、拍子抜けしたそうです。
隣の部屋は台所で、テーブルや椅子、食器棚には埃が積もっていましたが、片付いていました。
「家の中はきれいなのに、なぜ外にあんなにゴミがあったんだろう」と知人が不思議に思っていると、廊下からAの声が聞こえました。
Aは一番奥の部屋の前で立ち尽くしていました。Bが「どうしたの?」と聞くと、Aは「何だこれ?」と懐中電灯で部屋を照らしました。
暗い部屋の中、明かりに照らされた先に襖があり、和室だと分かりました。
しかし、知人が驚いたのは、畳を覆う大量の砂でした。雪のように灰色の砂が一面に積もっていたのです。
Bが「これ、灰だ」と震えながら呟くと、知人も仏壇の線香の灰と同じだと気づきました。
異様な光景に3人とも凍りつきました。言い出しっぺのAも怯えていましたが、好奇心が勝ったのか、奥の部屋に踏み込もうとしました。その瞬間、「ガタン!」と大きな音が響きました。3人は悲鳴を上げ、一目散に窓から逃げ出しました。
夢中で走った後、気づけば3人は近くの公園にいました。Aが「何だあの音、奥の部屋からじゃなかったか?」と聞きましたが、知人は怖くて音の出どころを思い出せず、Bは「2階からだった」と言い出しました。
知人が「あの家に誰か住んでいるんじゃないか」と言うと、Bは「家の中は埃だらけだった」と反論しました。
しかし、Aは「奥の部屋と2階は見ていない。誰かがいてもおかしくない」と焦った様子でした。
もし本当に人が住んでいたなら、3人は不法侵入したことになります。3人は「このことは絶対に誰にも話さない」と約束し、帰宅しました。
その後、3人に不幸が起こることはありませんでした。ゴミ屋敷は1年後に解体され、新しい家が建ち、家族連れが暮らしているそうです。
知人は今になって、お婆さん以外の家族があの家にいたのかもしれないと考えています。ただ、あの和室の大量の灰だけは、今も不気味に思うそうです。


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。