これは私が昨晩の11時頃、ある匿名チャットアプリにて体験した話だ。普段はミステリーを書いている私だが、この話を誰かに共有したくなり、このサイトを見つけて今これを書いている。その匿名チャットアプリは、マッチングするというボタンを押すことで、匿名の人物とマッチングし、会話できるというものである。
私はその匿名チャットアプリで、いつものように小説を書くためのネタを集めていた。というのもこのアプリは危ない人間がたくさんいて、そのマッチングを使う人はほぼそういう目的で、プロフィールに未成年と書いてあっても平気でセクハラ的な発言をしてくるのだ。そりゃ、人間の性欲の部分を丸出しにしたような人ばかりなものだから、面白いネタがたくさん集まる。特に私は人間の欲から生み出される邪悪を根源としたミステリーをいつも書いているので、それにはうってつけの場所だったのだ。
唯一の不満な点といえば、ブロックを押しても自分が一度名前を変えたらリセットされ、ブロックした人とマッチングするという点で、匿名かつマイナーで使用人数の少なそうなアプリならではの設定と言える。しかし、私は別にすぐにやれる相手を探しているわけではないので、面白くない人に2度も当たるとかは正直面倒くさい。面白くない人は、チャットを無視して放置し、あえてブロックせずに残すのと、厄介になりそうな予感がしたらすぐに望まなさそうな返答をすることで対処していた。
大抵の場合、チャットが始まったら相手は『こんばんは〜』『いくつ?』と言う。私は16歳、女、都内在住というウケのいい設定にしているので、『16です。高1。』と返信し、相手は私の経験上『〇〇歳だけど、年上平気?』と聞いてくる。当然『平気』と答え、会話を続けるというのを繰り返していた。
ところで、その体験についてだが、この時はいつもと流れが少し違った。名前は印象に残っていないくらい普通の名前で、しかし今思えば確か『なぎさ』とか『あすか』みたいな中性的な名前だった気がするので、アプリでランダムにつけられる名前の説が濃厚であるが、このアプリではみだらな言葉や、出会い目的なのが分かるような地名が名前に入っていることが多いので、その時はまずそれに対して珍しく思った。それからマッチングして始めの一言、相手は『ひとりっこ?』と聞いてきた。私は経験から、どうせひとりで何かをできる状況にあるか…とかの確認であろうと思い『いや、兄弟がいます。』と答えた。なぜなら大抵そういう場合『そうです。』と答えるとビデオ電話を迫られる。そうなると無視をしても、やれると確信している相手は電話をたくさんかけてくるし、非常に厄介なのだ。だからその線は消しておこうと思った。しかし相手は「構成は?」と聞いた。そこで私はとっさに「兄と妹です。」と答えた。実際、私には兄も妹もいない。相手は続けて「その2人は?いくつ?」と聞く。こんなことを聞くなんて、きっと稀有なご趣味をお持ちで、そういう妄想をしたいのかなと思ったが、私は律義に「兄は18歳で妹は4歳です。」と答える。なんとなく、自分の予想の答え合わせがしたくて。すると相手は「うんうん、いいね。今(私)ちゃんは生理?」と少し斜め上の回答をした。いやぁ、なかなかにキツイなぁと思いつつ、こんな稀有な趣味っぽい男を逃したくないので「えぇ、はいそうですけど…なんでわかったんですか?」と嘘八百を返してみる。すると相手は「そっか、じゃあそのまま部屋から出ようか。」と食い気味で即レスしてきた。興奮気味なのが伺える。しかし、私はこの言葉に返信するか迷った。大体、こういう指示系の男は写真を要求してくるからだ。面倒事になる前に無視を決め込みたい。返答に迷っていると「出た? そしたらお兄さん寝てるか確認して』と相手からチャットが来た。いや、これはちょっと面白いかもとそのまま返答することにし、『はい、出ました。兄は寝てます。」と嘘っぱちを返した。少し時間を置いてから相手は「いい子だ、お兄さんの部屋の扉は開けたままでね」とレスし、続けて「お母さんとお父さんは?」と尋ねた。やっぱり、これはひとりでなにかをさせるための質問なのか?と疑ってかかったが、扉を開けたままというのが気になって、「はい、寝てますよ。妹も一緒です。」と続けた。すると相手はまた少し時間を置いてから「うん、じゃあ扉は開けといてね。」と言ったので、私は気になって「なんでですか?」と聞いてみた。すると返信が10分ほどしても返ってこなくなり、私をとんでもない大物を逃したような後悔や苛立ちが襲った。普段ミステリーを書いていることもあり、好奇心や知識欲は人の2倍ほどはある私。どうしても耐えきれなくなり「ごめんなさい、他に何をすればいいですか?」とレスをした。するとすぐに「返信を打ち込んでいます」という表示がチャットに現れては消えを繰り返したので、期待したものの長文を打ち込んでいるのか?と待てず苛つきながら見ていると、ただ一言「今からでもやり直せるよ。」と返ってきた。日本語の使い方が変だなと思いつつ少し安堵して私は「はい、じゃあ次は何をすればいいですか?」と返信し、これで相手がどんな目的か分かるんだと期待して画面を見ていると、また「返信を打ち込んでいます」という表示が現れては消えを繰り返していたので、苛立ちを抑え私は他の人と話しながら待っていた。すると通知が来たのですぐに確認しに行った。そこには「まず弟さん2人の部屋の扉を開けて、その後にお祖母さんの部屋を開けて。」と。これは私の本当の家族構成であり、部屋の位置関係的にもこの家族の部屋は近くにある。いや、これは私以外の誰かへの返信を間違えて送っただけに違いないと思うようにして、私は無視をすることにした。すると数分後、また通知が来て私はその最初の方の文章だけ見てすぐにブロックをした。
「明日、生理が来るから。その時までに家のすべての扉」
あのチャット相手は一体何をしたかったのだろうか、扉とは一体何だったのだろうか、私は何をさせられるところだったのだろうか…今となってはそれはすべてわからない。ただこのあとわかって怖かったことと言えば、先ほどトイレに行ったらショーツに血が付着していたということだ。私は今日、間違いなく自ら扉を開けるということができないだろう。






















「帰ってくるだけで特に害の無い霊」より怖い((((;゜Д゜))) とりあえず粗塩とラベンダーで厄除け
怖いこれは怖い