モカちゃん
投稿者:やおよろず やお (6)
小さい頃、よく人形で遊ぶのが好きだった。
特に好きだったのは寝かせると瞼を閉じて
寝てるように見える赤ちゃんのお人形。
弟しかいない私にとって、なんだか妹ができたような気がしてどこでも連れて歩いてた。
けど、小学校に上がってからはだんだんと遊ぶ機会も減って部屋のインテリアになってしまった。
ある時、夏の特番によくある怖い話特集をテレビで見てたら、「髪の伸びる人形」だの
「涙を流す人形」だの人形の話が出てきて
幼い私は怖くなって人形を押し入れにすぐしまった。
今思えば長いこと置いといたせいで壊れただけだったと思う。
しまう際に目を閉じるはずの人形がずっとこっちを向いていたのがあまりに怖くて、しばらく押入れのある部屋には行けなかった。
それから数年、両親が離婚し私と弟は母と母の実家で暮らした。
ずっと暮らしていた場所から離れるのは寂しかったが、そんなのは時間が解決するもので
今ではすっかりこっちでの暮らしが長くなり
向こうでの暮らしは思い出と化している。
気が付けば私も弟も社会人になり親子3人仲良く生活していた。
そんな中、我が家に父の訃報が知らされた。
アルコールを多量に飲んで階段から転落。
打ちどころが悪かったらしい。
離縁してはいるが、最期の見送りくらいは…と
親子3人で葬儀に参列した。
久しぶりに見た父親の姿と親族の憔悴しきった様子。
私と母も慣れない葬儀や親戚との関わりで疲れてしまい、我が家へと戻った。
弟は「久しぶりにこっちにきたから、ちょっと散策してから帰るわ」と。流石まだ若い。
夜も深まり、弟が帰ってきた。
弟は帰って早々楽しそうに話しかけてくる。
「姉ちゃん聞いてよ!昔住んでた家の近く散策してたんだけどさ。懐かしい子に会ったんだよ!わー、久しぶり!何年振り?元気だった?今どこ住んでてさーとかってたわいもない会話してたんだけどさ。
見た瞬間すぐわかったよ。全然変わってないの。面影そのまま!モカちゃん、覚えてる?
昔3人でよく遊んだよなあ〜」
楽しそうに話してくるが、私は頭にはてなが浮かぶ。
モカちゃんなんて共通の知り合いはいなかったし、私たち2人以外の時は複数人で遊んでたはず。
いや、その中でもモカちゃんなんて名前の子はいなかった気がする…。
( ゚д゚)
怖い