心霊スポットに行ったから
投稿者:有野優樹 (6)
「心霊スポットって、やっぱり行っちゃいけないんだと思ったことがあって。人も巻き込んじゃうし」
そう話を聞かせれくれたのは香菜(仮名)さん。香菜さんが大学生の頃の話だという。
Aさん、Bさんという仲の良い友達が2人いた。授業もお昼もいつも一緒で、他愛もない事から真面目な事まで隠し事なく色々話せていた。
ただ、“一つ”を除いて。
隠したくて隠していたわけではない。言う必要もタイミングもなかったから、言わなかっただけだったのだ。
とある日。いつも通り3人で学校前から出ているバスに乗り込み帰っていたときのこと。1番後ろの一列になっている席に横並び座り、今日学校で起きた事や最近ハマっていることなどの雑談をしていた。するとあることにAが気づく。
「バスさっきから進んでなくない?」
外を見ると車の列。
「渋滞だ。珍しいね」
止まるたびにエンジンを切るバスの車内は静まり返っていた。静かな車内に気を遣いながらも雑談を再開する。
しばらくすると動き出すがまた止まる。歩いた方が早いような気もするが、疲れもあるのでそんな気持ちにはなれなかった。
するとAさんが
「あれなんか変じゃない?」
と言った。
運転席の斜め上。バス停の案内が出る電光掲示板を指差した。いつもはオレンジ色の文字で表示されているのだが、今日は赤く文字化けしているように見える。
「運転手さん気づいてないっぽいよね」
ほとんどの文字は読み取れなかったが、一つの文字だけ読み取ることができた。
『骸』
むくろ。その文字は、赤色で表示されている。
顔を見合わせ、口に出すこともなく怖さを目配せで共有する。骸という文字は怖さを通り越して理解ができなかった。しばらくするとバスが動き出す。静かだった車内に聞こえるエンジン音。何か音がするだけでも、心なしか安心感があった。
電光掲示板は次のバス停「貯木場前」を何事もなかったかのように表示している。さっきの文字を見たことは気になっていたが、そのあと誰も切り出すことはなかった。
この話を2人以外の誰かに聞いて欲しかったので、アルバイト先の店長に話すことにした。
「貯木場、前なんだったか知ってる?あそこ、昔は死体の安置所だったらしいよ。戦争のときたくさんの人たちを安置しておいたところ。今は木材置き場になってるけど、あんなに広いのはだからなんだって。もしかしたらそれかもよ?」
何の関係があるのか?と思ったが、あのとき表示された「骸」という字。骸とは死体のことだ。もしかすると関係があったのかも知れない。
冒頭で書いた2人への隠し事。それは、1人で心霊スポットに行っていたことだった。一時期自分でも不思議なくらい心霊スポットに行くことにハマっていた。
ある日、自宅の浴槽に浸かっていたとき水が怖く感じた。溺れた経験もトラウマもない。りゆうはわからなかったが、しばらく浴槽に入れなくなってしまった。
心霊スポットに行き始めてからこの異変を感じるようになったので、もしかしたらと思い近所の神社にお祓いに行くことにした。住職さんと顔を合わせるや否や
「水で亡くなられた方が憑いている」
住職さんということはお寺にお祓いに行ったんでしょうか。大事になる前にお祓いしてもらえてよかった。
友人も巻き込む恐れがあるなら尚の事、心霊スポットは行くべきではないですね。