【short_26】ゴキババア

修学旅行の時に泊まった旅館での出来事です。

深夜、なんだかカサカサと物音がして目が覚めると、
そこには、床の間をカサカサと音を立てて走る虫のようなものがいました。

「はっ!ゴキブリ!?」と一瞬そう思ったのですが、よく見るとそれは四つん這いになって走る小さなお婆さんで、それが爪を立ててカサカサと猛スピードで動いているのです。

私は怖くなり頭まで布団をかぶり身動きもせずじっとしていました。
「早くいなくなれ!　早くいなくなれ!　早くいなくなれ!」そう念じながら。

その時、隣にいた友達が「ずっと一緒だよ~~」と寝言を言いました。

思わず「ひっ」と声を上げる私。
その瞬間、頭からかぶっていた私の布団の中を、小さな四つ足の何かが走り抜けていきました。私は背筋が凍り付き、そのまま朝まで気を失ってしまいました。

翌朝、起こされた私はすぐにその話をみんなにしました。

「変な夢でも見たんだよw」とみんなから突っ込まれたものの、一人だけ「そういえばなんかカサカサ物音がしてたような気がするなぁ」と言ってくれる子がいました。

昨夜「ずっと一緒だよ」と寝言を言った彼女です。

唯一の理解者となってくれた彼女とは、それからずっと仲良しの友達となりました。

ある意味、ゴキババアには感謝です。