ママへ
投稿者:とくなが (5)
これは私が体験した中でも結構辛いやつなので書こうか迷ったのですが、区切りをつけるために書かせてください。
私がアルバイトをしていた時の話です。
私は赤坂のGスタジオというところでアルバイトをしておりました。
Gスタジオは発声練習ブースなど演技や歌の練習にも使われる簡易スタジオで色々な人の出入りがありました。
そのなかでも17歳役者志望のYちゃんは私の記憶に鮮明に残っています。
Yちゃんは現役高校生で学校終わりは芸能事務所のレッスンと大変な毎日だったようです。
そのレッスン内容の中にGスタジオでの発声練習が組み込まれていました。
毎日のように発声練習に来ていたこともあり、良く話していました。
時々母親も一緒に来ており、とても熱心にレッスンをこなしていました。
時には熱心になりすぎたのか休憩ブースからYちゃんを罵倒する母親の声が響いていました。
「ママのためにってあんたいつも言ってるけど自分の意見がないの!?」
頭を叩かれたり、「へたくそ」「ひとのせいにするな」と叫ばれたりとかなりのスパルタを感じました。
その度Yちゃんは個人契約していたロッカーの前で泣いていました。
私はやりすぎだろ、と勝手に思っていたのですがYちゃんは「ママのおかげだから」と良く口癖のように言っていました。
ある日、Yちゃんが休憩ブースで何か書いていたので声をかけてみると「ママに手紙を書いてるんです。今の時間しか書けないし・・・今書いとかなきゃって」「今の自分があるのはママのおかげだから、自分の気持ちをちゃんと伝えたくて」と お母さん思いのいい子だな~と感心しました。
数日後、無理が祟ったのかYちゃんは学校で倒れ入院することになりました。
それから1か月に1~2回程度Gスタジオに顔を出していましたが、みるみる痩せて行ってるのが見て取れました。
どうやら悪い病気が見つかったと、風のうわさで聞きました。
私はYちゃんに「もう無理してスタジオに来ることないんじゃないか」と伝えたところ「ママのために!」の一点張りで取り付く島もありませんでした。
それから半年間、Yちゃんはスタジオに姿を見せなくなりました。
ある朝、Yちゃんのお母さんがスタジオにやってきました。
そこで私はYちゃんが数日前に病院で亡くなったことを聞きました。
聞いた瞬間、(やっぱりそうか・・・)という気持ちと悲しい気持ちが綯交ぜになってました。お母さんが「Yの私物がロッカーに残っているようなので整理しに来ました」と仰ったので、私はYちゃんが契約していたロッカーまで案内しました。
「ここです。暗証番号分かりますか?」
「あの子から聞いてるから大丈夫」
そんな淡々とした会話をしながらお母さんがロッカーを開けました。
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