学童のあの子
投稿者:杣人 (1)
人間って生きてると色々あるけど、本気で血の気が引いた瞬間っていうと中々ないと思う。
話は俺が小学校3年生のときにまで遡る。
俺は親が共働きで帰りが遅かった関係で、学校近くの学童保育によく行っていた。
学童には色んな子どもがいたが、その中にすごく可愛らしい1年生の女の子がいた。
いつもリボンで結んだ三つ編み髪で、抱っこするとミルクみたいな匂いのする子だった。
もちろん恋愛的な意味で好きになった訳ではなかったが、俺に懐いてきたその子があまりに可愛すぎて、ちょっとした加虐心がフツフツと湧き上がってくる自分もいた。
悪いこととは知りつつ、冬休みの前の日、俺はその子にイタズラをしてしまった。
図書ルームで、女の子をあぐらの上に乗せて読み聞かせているとき、スカートの中に手をもぐらせてまさぐった。
今思えば本当に最低だ。
純粋でおっとりした子だし、別に自分のされたことが理解できないだろうと。
案の定、「くすぐったい」と無邪気に笑うだけで特に拒否感を示されることもなかったし、その後にも何も言われることはなかった。
4年生くらいになると学童に通うようなこともなくなり、話は数年後になる。
中学3年生になって高校受験を控えた俺は、親に言われて駅前の塾の体験授業を受けた。
本当に偶然なのだが、塾の生徒には学童のあの女の子がいた。
もちろん記憶にある幼い姿とは全然違うのだが、三つ編みは変わってないし、整った顔立ちも面影があるし、なにより苗字がすごく珍しいので、俺はすぐにあの子だと気づいた。
しかし当然ながら向こうはこちらに気づくようなことはなく、一瞬すれ違っても、特にお互い気にするようなこともなかった。
授業を受け終わって塾から出ようとしたときに、下駄箱から靴を取り出そうとすると、靴から1枚の紙が落ちてきた。
小さなメモ紙だった。
気にせず床に落ちたままにすれば良かったのに。
気になった俺はそれを拾い上げて、何が書いてあるか見てしまった。
「ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない 」
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