山道で出会った老婆
投稿者:泥沼 (2)
俺の趣味はバイクに乗ることだ。
自分が知らない道を自由に走るのが好きで、その日も遠出して山道を走っていた。
右を見ても、左を見ても、緑一色。
コンビニも無ければ、民家も何もない。
あるのは虫の鳴き声と風で揺れる森林音。
誰にも干渉されない癒しの環境である。
山の頂上を目指して、バイクを走らせる。
ただ、坂道を上っても上っても。
目の前に見えるのは永遠に続く坂道だ。
頂上で食おうと思っていたが、予定変更。
小腹が空いた俺は途中でバイクを降り、昼食を取ることにした。スマホを触りながら、おにぎりをムシャムシャ食っていると——。
車椅子に乗った老婆が目の前に居た。
老婆は変な奴が居るという目で、こちらを見てきた。こんな場所で一体何をしているんだと、物語っていた。懐疑的な瞳である。
変な奴ではありません。
俺は良心な一般人ですよー。
というのを証明するために、俺は軽く頭を下げて、ニッコリ笑顔を浮かべてみせた。
だが、老婆は何も言わずに立ち去った。
キィキィと車椅子が軋む音だけが響いた。
変な婆さんだ。飯が不味くなったぜ。
と思いながらも、スマホを触ってたら。
不意にとある疑問が湧き上がってきた。
「あれ……? あの老婆どこから来た?」
見渡す限りは森林のみ。
民家はどこにもないのだ。
永遠に続く上り坂しかないのである。
もしも、上り坂から来たとして、あの老婆は車椅子に乗っていた。どうやって上まで戻るつもりなのだろうか。不可能な話である。
また、今までに車ともすれ違っていない。
俺は慌ててバイクに乗り、坂を降ってみた。老婆が向かった方向である。出会ってから、まだ五分も経っていない。会えるはず。
そう思っていたのだが、老婆は何処にも居なかった。勿論、車椅子も見当たらなかった。ただ、果てしなく続く下り坂があった。
山道で、突然車椅子の老婆が現れた時点で絶叫です。
で、バイクで走っていると後ろから車椅子の婆さんが猛スピードで追いかけてくんねんな。