落書き
投稿者:ブラウンシュガー (2)
たまに街中に、スプレー缶で描かれた落書きってありますよね。私の地元も少々荒れた地域で、若者がホームセンターでスプレー塗料を買う際には身分証明をしなければならないほど問題になっていました。
私が中学生の頃、仲の良いA君、B君と毎日通学していました。県内で1番大きな川の傍を通る道が私たちの通学路でした。
ある朝、いつも通り2人と待ち合わせをし、川沿いの通学路を歩いていると、A君が「あれ、すごくね!?」と何かを指さしています。
見ると、橋の裏側にスプレーで何かの落書きがあるのです。
大きな川にかかっている、片側二車線の大きな橋。水面からその落書きまでは10メートルはあるでしょう。もちろん、橋の上から手を伸ばしても到底届かない位置ですし、橋桁も何もない部分に赤いスプレーで何かが描いてある。
次の日、同じように集まると、A君がおもむろにカバンから大きな双眼鏡を取り出しました。お父さんの物を拝借してきたそうです。私もB君も、双眼鏡を覗くA君を早く早く!と急かしました。
しかし、双眼鏡から目を離したA君は、真っ青な顔をしてガタガタと震えながら「なんで…なんで…」と、今にも泣きそうな声でつぶやくのです。
A君から双眼鏡を奪い取ったB君も、その落書きを見た瞬間、ヒッ、と小さい悲鳴を上げ、こちらに双眼鏡を手渡しました。
こんな状態の2人を見た後でも、恐怖より好奇心が勝り、私もその落書きを見ました。
そこには、赤いスプレーで、A君のフルネームが書かれていました。
しかも、今私たちが見ている場所から、丁度真っ直ぐ読める角度で書かれていたのです。
A君は落書きをするようなグループと接点があるような人間ではないですし、その後、彼の身にも特に変わった出来事はありませんでしたが、次の日から私たちはその道を通ることあっても、その橋の付近に差し掛かると無意識に視界に入れないように歩くようになりました。3人の間でも、この話題は暗黙の了解で誰も口にすることはありませんでした。
しばらくした後震災があり、その影響でその橋に大規模な補修工事が入ったため、当時の面影は無くなり、今ではどこにその落書きがあったのかも思い出せません。
そしてついこの間、地元に帰った際に、当時の3人で飲み会をする機会があり、私は酒の勢いで当時の話題を切り出しました。
「最初は違う誰かの名前だったんだよ。工事の責任者の名前でも書いてんのかなーって思ったんだ。でもな、俺が見てる目の前で、俺の名前に書き直されたんだ。書き直されたあと、俺の方に名前がグル〜っと回ったんだ。
俺の息子、最近幼稚園でひらがなの書き方を習って帰って来たんだけどさ、
…なんか、息子がさ、俺とか嫁さんの名前を書いて、それを褒めてほしくて見せてくんの。
なんか、それと同じだったんじゃないかって思うんだよね。」
kamaです。すごくおもしろいです。こーゆー話し大好きです。
怖いってか これ書いた人が怖い