通り過ぎる老婆
投稿者:ぴ (414)
私が中学生のときに、修学旅行に行った時の話です。
行きのバス停で、腰の折れ曲がった老婆を見たのです。
なんとなく、記憶に残って覚えていました。
おばあさんは90歳くらいのご高齢。髪に椿の髪飾り挿していて、それで印象に残ったのです。
修学旅行の行先は京都でした。
そこで私はみんなでわいわいしながら、銅像を見ていたのですが、その観光地でまたも腰の曲がった老婆とすれ違いました。
似たようなおばあさんに会ったのがなんだか奇妙で、事細かくそのおばあさんのことをその日の日記に書きました。
おばあさんの服装とか見た目の雰囲気とか文字に残しておいたのです。
その翌日に、みんなでお土産物屋さんを見て回っていたときに、私はその人に気づいて声をあげそうになりました。
だってまたあの老婆と再びすれ違ったからでした。
老婆は昨日着ていた服と全く同じ服を着ていました。
そして髪にはあの椿の髪飾りをつけていました。
日記に書き留めていたため、別人だと疑うことはありませんでした。
同一人物だと分かったのはあまりに着ていたものが同じだったからです。
腰の折れ曲がり方も顔のしわも、すべて私が前日見た人と同じ人だと分かりました。
なんでこんなに行く先々で同じ老婆を見かけるのかと不安になったし、そして自分以外にその人に気づいていない周囲の人にも怖くなりました。
聞いてみたけど、腰の曲がった老婆を見たという友達は私以外には誰一人としていなくて、そうするともしかしてあの人は私にしか見ていなかったのかもしれないとより大きな恐怖心に苛まれました。
そしてその日の夕方に、旅館の従業員らしき人から偶然にもこんな話を聞いたのです。
「通り過ぎる老婆」という旅館で知られる怪奇現象の話でした。
その老婆はもとともこの旅館で死ぬ間際まで働いていた従業員でした。
ある日、帳簿の計算がおかしいことに一人だけ気づいたのだそうです。
帳簿をつけている人に実際に確かめてみようとして問い詰めたら、その人が犯人で老婆は口封じのためにその場で殺されて、裏の山に埋められてしまったそうなのです。
その後犯人は自分で名乗りを上げ、警察に捕まりました。
そして毎日殺した老婆の幽霊が枕元に立って恨めしそうに見てくると話したと聞きます。
その頃からたまに旅館に幽霊が出ると噂が立つようになり、怖がられているとその人は話しました。
話が終わると一緒に聞いていた友達は怖いねと話して、キャッキャとその場から立ち去りました。
でも私はその話し手のことがどうしても気にかかり、その話をもっと詳しく聞きたくてこっそりと追跡しました。
しかし従業員をしばらくつけて行ったら、急に掻き消えるみたいに消えてしまったのです。
そして私が慌ててその辺を探し回ったけど、やっぱり見つかりませんでした。
その代わりにその人が消えたあたりに、見覚えのある髪飾りが落ちていたのです。
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