虫の逆襲

今でこそ、大人しい兄ですが、昔はとてもやんちゃで、よくとんでもない遊びを楽しんでいました。

その頃は虫をいじめ倒すのが楽しかったらしく、そういう遊びをしていたのです。

あまりに酷い殺し方をするので、最初は何度か止めたのです。

でもすぐに怒るし、手をあげるので、だんだん巻き込まれるのが嫌になり、兄が虫に何をしても気づかないふりをして見捨てるようになりました。

そんなある日、私はとても夢見が悪かったです。

夢で私は虫に刺されて、高熱を出して、何日か生死の境をさ迷ったのです。とても苦しくて嫌な夢でした。

そしたら同じ日に、兄がおねしょをしたと母が騒いでいました。

恥ずかしそうにする姿を見てやろうと思っていたら、兄が見たこともないような真っ青な顔をしていました。

そして話を聞いたら、兄もまた私と同じく悪い夢をみたのです。

しかも兄の夢は私よりも酷くて、遊んでいたら腕の中に虫が卵を産み付けて、後日卵が孵って内側から虫の幼虫に体を食い尽くされる夢だと聞きました。

痛くてたまらなくて死ぬ思いをしたそうです。

私はそれを聞いて、なんとなく偶然じゃないように思いました。

あの日以来、兄は虫を虐めるのをやめたのです。

それどころか虫を殺すこともできないくらいに大の虫嫌いになりました。

今も小さな羽虫であっても、殺すのを嫌がります。それほどあの夢が恐ろしかったらしいです。

私はこれを偶然だと思っていません。

理由は兄がおねしょをした布団の近くで、虫がいっぱい死んでいるのを母親が発見して騒いでいたからです。

あの虫たちはどこからやってきたのか兄にも分からないそうです。

もうこれ以上殺されないように、自分たちの命をかけてまで行った虫の逆襲だったのではないかと私は思っています。