白い手
投稿者:anyo (3)
短編
2023/01/13
08:55
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小さい時に母を亡くした後、しばらく、白い手がずっと私と一緒にいてくれていたという思い出があります。
しかしその手は当時幼稚園児だった私以外の誰にも見えなかったらしく、父に「パパ、ここに白い手がいるの」と訴えた後、困惑した態度を取られてからは、「どうやらこれは私以外の誰にも見えないらしい」と幼心にも理解し、その手のことを誰にも言うことはありませんでした。
手はいつも私と一緒にいてくれて、苦手なピアノの習い事のときには横で応援してくれましたし、一人で家にいる時などはぬいぐるみを使って一緒におままごとをしてくれたりもしました。
手が見えなくなったのは私が小学校に上がって三年生くらいになってからだったと思います。寂しくて泣いたりもしましたが、やがて「あれは亡くなったお母さんが私を心配して一緒にいてくれたんだ、私が大きくなったからお母さんは成仏したんだ」と考えるようになりました。
ところが、ね。
大学生になったときに、父から「お母さんは事故で亡くなったとずっと言っていたけれど、実はあっちの浮気で、私を捨てて出ていったんだ」と教えられたんです。
私は主に白い手との思い出のことでパニックになってしまいました。だってあれは亡くなった母だと思っていましたから。
今でも思うんです。私と一緒にいてくれたあの手は誰の手だったんだろう、って。
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