白い布が飛ぶ
投稿者:瀬奈 (1)
短編
2022/11/30
22:37
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これは私が7歳の頃の話です。
車に乗って買い物に行く途中、ぼーっと窓の外を見ていたら、ある家の屋根の上に白い布が飛んでいるのが見えました。洗濯物が舞っているのではなく、長い手拭いのような布が家の上をぐるぐると回っているのです。
気になって母に伝えましたが、母は見えない、わからないと言っていました。
そのときはあまり気にも止めていなかったのですが、その数ヵ月後、近所でまた同じ物を見ました。
今度は車から見たのではなく、外で遊んでいる最中にはっきりと。大きな車が置いてある家の屋根の上で、同じく白い布がぐるぐる回っていました。透けているような、ツルツルとした質感の布です。細長く、皺はあまりありませんでした。
これは何かしらある、と幼いなりにも思った私は、家に戻って母に聞きました。
「あの大きな車があるお家、何かあったの?」
すると母は驚いたような顔をして言いました。
「あそこの家のおばあさんが亡くなったんだよ」
私が見ていた白い布はきっと、おばあさんの魂だったのではないでしょうか。きっと、お別れをしにお家に帰ってきたのだと思います。
実はこの後、白い布は何度か目撃しましたが、ある時を境に見えなくなってしまいました。
昨年、祖父が亡くなりました。
出棺の際、ふと屋根を見上げましたが、やはり白い布は見えませんでした。祖父の白い布は見たかったな…と思います。
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