トイレの女性
投稿者:胡弓 (1)
これはもう30年以上も前のお話しになります。
ある夏の夜に遭遇した出来事ですが、今でもあの時の光景が脳裏に浮かび、どうにも不思議で忘れることができないのです。
その日は朝から男女大勢のグループで海水浴にでかけていました。暗くなるまで遊んで、帰りは当時の彼に車で送ってもらっていたのですが、腹痛に襲われて家までもたないと思い途中にあったJRの駅(当時はまだ国鉄)のトイレを借りることにしました。
私はふだん、よほどのことがない限り、公共のトイレを利用することはありませんでした。今ほど衛生的なところがなかったからなのですが、その時はそんなことを言っておられず駅員さんに事情を話して駅のトイレに駆け込みました。
女子トイレは入って左右に3つずつほど個室が並んでおり、私は迷わず右側の一番奥のトイレに向かいました。というのも明らかにドアが少し開いていたため誰もいないと思ったからです。
でも違いました。ドアの隙間から見えたのです。長い黒髪の人がトイレの床に這いつくばるようにしている姿が。しかも真っ白なワンピースを着ているのです。
最初見た瞬間は何か落とし物でも探しているのだろうかと思いました。じめじめした汚い床に手をひたひたと這わせて顔も髪も床に着いていたのでコンタクトレンズでも落としたのかなと。
それにしてもあまりにも異様な光景に、見てはいけないものを見てしまった気がして怖くなり、結局他の個室に入ることもなくその場から逃げるように飛び出しました。
彼の待つ車に戻ると、理由も話さず発車をお願いしました。彼は私の様子にびっくりしていたと思います。
不思議なことに腹痛は家まで何とか我慢できました。それよりもぞっとしていてしばらく彼とは口がきけませんでした。
あの人の顔は見えませんでしたが、感覚的にはこの世の人ではなかったという気がしています。30年以上経った今でもはっきりと覚えています。
それからしばらくして「貞子」の映画が有名になりましたがあの時の人のイメージとそっくりに思えました。
国鉄時代のトイレは汚かったですよね。
怖い。