身代わり人形
投稿者:ぴ (414)
昔は病弱で、よく熱を出しては病院に連れていかれました。
本当に体が弱くて、両親にはたくさん心配をかけたと思います。
そんな私を心配した母が近くのお寺に私を連れて行ったのです。
あまりに昔の記憶なので、朧げにしか覚えていないのですが、そこには人形がたくさん飾ってありました。
母はその人形の隣に、新しく人形を置きました。
そして私に「これはあなたの身代わり人形だから」と教えてくれたのです。
うちの地区には、昔身代わり人形という儀式があったそうです。
その儀式の内容は詳しくは知らされていないのですが、体の弱い子供の代わりに人形を収めると、その人形がその子が受けるはずの病気や災厄を身代わりに受けてくれるらしいです。
大昔には当たり前のようにやってきた儀式でしたが、近年では見られなくなりました。
その身代わり人形を私は行った覚えがありました。
年齢の割にその記憶は鮮明に残っているのですが、父や母に聞いてもまったく覚えていないのです。
これは不思議としかいいようがなかったです。
そして私が二十歳になる誕生日の朝だったでしょうか。
朝起きたら体がなんだか重かったです。
おなかが重いような気がして、布団をめくるとそこにはいつしか見た身代わり人形がいたのです。
一瞬悲鳴を上げそうになりましたが、誕生日に私を脅かそうと母が仕込んでいたものだと思い直しました。
けれど私の予想は外れて、母はまったく覚えがないようでした。
部屋に戻るとすぐに人形を探したけど、あの人形はどこにもいなかったです。
身代わり人形は20歳で役目を終えると聞きます。
きっとあの人形も私の身代わりという役目を終えて、自由になったのではないでしょうか。
あの人形がどこに行ったのかは分からないですが、私はそっと心の中で人形にお礼を言いました。
あの人形のおかげなのか、私は今も健康で健やかな体で過ごせています。
身代わり人形に感謝ですね。