紅いコートを着た女
投稿者:獄画廊 (4)
これは友人の体験談です。
その日、友人は仕事で疲れていて電車の空いているシートに座っていたそうです。普段は立って少しでも早く電車を降りるようにしているそうですが、その日は立っているのも辛かった、とか。そのまま電車に揺られていたそうですが、大きな駅で沢山人が乗り込んできたそうですが友人の正面の席、一人分だけ空いた状態で誰も座っていなかったそうです。友人は不思議に思いながらもそのまま降りる駅まで過ごそうとしたそうですが、どうにも気になって顔を上げました。席には誰も座っていません。にも関わらず立っている人は誰も座ろうとしない事が気になって真っ直ぐに顔を上げました。
――そしてビクッとしました。
空いた席には誰も座っていないのに正面の窓、つまりは友人が座っているシートの真後ろの窓には紅いコートを着た女性の姿が映っていたそうです。誰もいないのに窓にのみ映る人物、それは要するに…幽霊、という事になります。
友人は窓から目を離す事もできないまま自分の降りる駅まで乗り続け、駅で飛び出るように降りました。そして何事もなく発進した電車には変わらず紅いコートを着た女性が乗っていたそうです。そして電車が発進した時、その女性がフッと振り返り友人と確かに目が合ったのだとか。友人は声を上げてその場に座り込んで、暫く放心してしまったと聞きました。
その後もその電車を利用したそうですが、毎回正面の席にその女性が座っているのを目撃するようになり、友人は堪らなくなって除霊で有名な寺に駆け込みました。そこで住職に言われたのは「もう少し遅かったら連れて行かれていた」との事だったそうです。
住職曰く、その女性は一緒に来てくれる人を探している霊、との事で震え上がってしまった、と溜息交じりに友人は言いました。
友人はお祓いを受けて今でこそ無事ですが、この話の怖いところはその女性が着ていたコートにあります。
紅く見えたコートですが元は白かったのだと住職に言われたそうです。でも友人が見たのは確かに紅いコートでした。どうしてそう見えてしまったのでしょう?
そう、女性が着ていたコートは自身の流した血で赤く染まってしまったために紅いコートに見えただけ、という事でした。
凄く怖いかったです。