逃れられない運命

私は生粋のホラー好きで、一時期はいろんな人から心霊の体験談を収集できたらと聞き込みのようなことをしていた時がありました。

この話を聞いたのは今から8年前です。

当時私は長男を出産して2か月くらい経っていました。
2か月になると、予防接種が始まるので病院に行く頻度も増えるのですが、私は車の免許を持っていませんでした。

仕方なく、タクシーを呼んで家まで送ってもらうことにしました。
タクシーの運転手さんが60歳過ぎのおじさんでした。
私も暇なので、運転手さんに「何か怖い話はありますか？」と思いきって聞いてみました。

すると運転手さんは「怖い話ですか？お化けとかってことですよね？うーん、ないなぁ」と答えました。

（やはりそんなすぐにいい話は出てこないか）と私は心の中で思いましたが、そのあとすぐに運転手さんが「でもこういう話はあるんですが」と話してくれました。

運転手さんが何年も前に同業者に聞いた話です。
乗用車が踏切の中で立ち往生してしまったことがあるそうです。

乗用車の運転手さんが何とか脱出して、踏切の外に出れたそうです。
その直後に列車と車が接触しました。
そのまま接触して飛ばされた乗用車と、運転手がぶつかってしまい結局運転手が亡くなってしまった、そんな話を聞いたそうです。

タクシーの運転手さんがそんな話を聞かせてくれた後に「せっかくねぇ、車から脱出しても、その車に撥ねられちゃうんじゃねぇ。そういう運命だったのかなって思っちゃいますよね」と切なそうに言いました。

私もその話をきいて後味の悪い気持ちになりました。