ウネ……ウネ……
投稿者:座馬 (6)
ついこの間、母が思い出した様に話してくれた体験談です。
まだ僕が中学生の頃、兄は夜間大学に通っていました。
ある日の深夜、兄が家に帰って来ると、玄関から上がるなり倒れ込んでしまったのです。
母が抱え起こすと、真っ赤な顔をして凄く熱い体をしていました。
兄の熱は39度以上あり、母はすぐに兄を布団に寝かせ、何があったのか尋ねました。
兄は「帰りにバス停で待っていたら、木から毛虫が落ちて来て刺された。それでこんな熱が出たんだ」と言うのですが、横で聞いていた僕は(毛虫でこんな風になるのかなぁ)と不思議に思っていました。
その夜の事です。母は寝苦しさを覚えて目を覚ましました。
「うね……」「うね……」そばで低くしゃがれた男の声が聞こえたそうです。
声がする兄の方を見ると、そこにはどこからどう見ても“落ち武者”がいました。
落ち武者は寝ている兄の周りを音も無くグルグルと回っています。
母が耳を澄ませると落ち武者はこう言っていたそうです。
「無念」「無念」「無念」……
翌朝、兄の熱は下がったのですが、昨日の事はよく覚えていなかったそうです。
学校から帰った僕(昨夜は熟睡)に母は落ち武者の話を聞かせました。すると僕はこう言ったそうです。
「あのバス亭がある〇〇という地名は昔の合戦で死んだ者達を弔った所から来ている」
「△△の乱の時に××に敗れた□□という者が、自分が落ち延びた先で力尽きた事に気づかず今も彷徨っている、おおかた兄に憑いて来たのだろう」
などと言う話をツラツラと語っていた、と母は言うのです。
ただ、そんな話、僕は聞いた事も無いし、何かで読んでもいないし、そもそもそんな話をした覚えが無いんですよね。
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