認知症
投稿者:梅雨守 (3)
私は長年医療従事者として患者様を支えてきました。その中でこれはどうなんだろうと思った話をご紹介します。
ご家族が入院された経験がある方はおわかりになるかもしれませんが、入院前に病歴とともにある程度の経歴や家族構成などを聴取させていただくことになっています。患者様にもとの生活に戻っていただくために必要な事項を確認するためです。
当然、患者様の中には特殊な経歴をお持ちの方もいらっしゃいます。これはそんな患者様の話です。
その患者様は足の骨折で入院されてきました。2年前退職された年に認知症を発症、徘徊した結果転倒して骨折、とのことです。
認知症になる原因はいくつかあるのですが、その一つとして仕事を辞めてやることがなくなり急に認知機能が落ちてしまった、という方がいらっしゃいます。
他に明確な理由もないことからこの患者様もおそらくそのような経過を辿られたのかなと想像しました。そして認知症による状況理解の難しさが転倒に繋がってしまった、よく見るケースです。
ただ発症までの期間がかなり急だなという印象でした。で、特殊な経歴というのが何だったかというと、その人はなんと記者さんだったんです。
認知症の方は今自分がどこにいるのかとか何をしているのかがわかりにくいです。新しいことを覚えるのは苦手で環境の変化にとても弱く、入院によって認知症が悪化してしまうことも少なくありません。
しかし、昔のことは割と覚えていて明確に答えることができる場合もあるんです。認知症の患者様と子供の頃の遊びを思い出したり、一緒にしてみるととても上手にこなされたりします。
この患者様は記者だった頃の記憶が鮮明に残っていて、事件やゴシップネタをよく話してくれました。
とはいえ、認知症の方のお話です。虚実入り混じっているかもしれません。私は話半分に患者様のお話を傾聴していました。当初は他のスタッフもそんなふうに考えていたと思います。
しかし、入院してしばらくするとスタッフの間で患者様の話はかなり信憑性が高いのではと噂されるようになります。
噂の主は○ャニーズ好きの看護師さんで彼女が知っている情報と患者様の話がほぼ一致どころか、更に掘り下げて話されることもあるというのです。
家族様からもやり手の記者さんだったと伺っていたこともあり、本気にしていたスタッフは多かったと思います。
それからもうひとつ噂が流れます。もしかしてアレも本当にあったんじゃないか。
患者様には決まって夜九時頃に起こされるヒステリーのような症状があり、その時「辞めてくれ!誰にも言わない!打たないでくれ!」と強い興奮状態になるんだそうです。アレとはつまりコレです。
こういった症状はそこまで珍しいものでじゃないんですが、内容が内容だけにもしかしてなにか事件に巻き込まれた過去があるのでは…というのです。
そう言われると私にも思い当たるフシがありました。少し前話題になっていた芸能人の不審死について患者様が話されていたことがあったのです。
「Iはな、自殺するようなやつやない。あれは○○が関わっとる。○○は恐ろしいで。」
他にも本当だったらヤバそうだなというネタを話されることは少なくありませんでした。
これは、もしかしたら、ですけど。
この世には『考える力をなくす薬』があって、この患者様は知りすぎた結果その薬を使わされたんじゃないかって。
考えすぎですかね。みなさんはどう思われますか?
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