ため池から聞こええるT君の声
投稿者:内 (3)
盆の頃になると、いつも頭をよぎる思い出があります。
私は兵庫県加古川市の生まれで、今は大阪市内に住んでいます。
子供の頃に住んでいた加古川はため池が多い地区で、いたるところに髑髏マ-クの看板が張ってあり、小さい子供はその近くに行ってはいけないと親に言われて育ちました。
もちろん地元の学校では休みの前には講堂に生徒が集められて嫌という程言われ続けてきました。
私とT君は家が近いということもあり、いつも学校から帰ってきては一緒に遊ぶことが多くて、その日も行ってはいけないと言われていたため池で魚釣りをしていました。
ため池は浅いので大人ならば危険ではなかったのですが、水が濁っていて子供は時々おぼれたりしていました。
その時は釣り具の一部がため池に落ちてしまい、T君がため池の中に入って探しに行っていました。
ちょうどその時に、学校の先生がパトロ-ルで回ってくるのが見えたので、ため池の外にいると見つかって怒られるので、私はわきに隠れてやり過ごしました。
先生が去った後、T君はそのまま家に帰ったらしく私も家に帰りました。
その日の夕方、T君の家から「Tが帰ってこない。しらないか?」と問い合わせがありました。
私はため池で遊んでいたことが、大人に知れると怒られるのでT君と遊んでいたことを黙っていました。
翌日、ため池からT君の水死体が上がりました。
T君の瞳は、私をじっと見つめて何か言おうとするような気がしました。
それから毎年、盆の頃になると「どうしてたすけてくれなかった?」という声が確実に聞こえるし、実家にもどってため池の近くに行くと体が必ず硬直してしまうのはあれから30年近く経つのになおりません。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。