灯台のようなもの
投稿者:くやり (24)
短編
2022/03/21
00:22
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私はある港町で漁師をしています。
夜釣りのシーズンは深夜も船をだすことが多く、海が荒れている時はヒヤヒヤします。
去年の夏、夜の海に網を張って漁をしているうちに潮の流れが変わって沖へと流されてしまいました。
周囲には他の船舶もなく、真っ暗な闇で孤立していた時、遥か彼方に明かりが見えました。
よく目を凝らしてみるとどうやら灯台のようです。
はて、このへんに灯台なんかあったっけと首を傾げたものの幸運には違いありません。灯台を道しるべに進めば港に帰れるはずです。
ところが……何故か灯台は一向に近付いてこず、だんだんと不審感が募ってきました。
あれは本当に灯台なのか?
灯台のような別の何かじゃないだろうか?
すると私の心を読んだように光の旋回がぴたりと止み、灯台が不気味に伸び縮みを始めました。
「あっ!」
思わず叫んでしまいました。海面に影を落とす灯台の形が、巨大な卒塔婆に見えたのです。
しかも影の先端が私の船を指しています。
次の瞬間大波がよそって、ひとたまりもなく海に投げ出されました。
幸い海を漂っている所を仲間の船に救出してもらえましたが、一歩間違えば命が危なかったです。
夜の海を照らす灯台は、漁師を冥府へ導く道しるべなのかもしれません。
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