用水池に入るな
投稿者:くやり (24)
短編
2022/03/13
23:03
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私の地元には用水池があります。散歩コースの途中に存在し、小学生の通学路にも近いので寄り道して遊んでいく子が絶えません。この池ではザリガニがとれるため、学校に持ってきて自慢するのです。
その日私はひとりぼっちで下校していました。宿題を忘れたせいで居残りを命じられたのです。薄情な友達は先に帰ってしまい、学校を出る頃には頭上に夕空が広がっていました。
ランドセルの肩紐を持ってとぼとぼ歩いていると、ちょうど用水池の近くにさしかかりました。
ぽちゃん、ぽちゃん。
突然の水音に面食らって顔を上げます。ぽちゃん、ぽちゃん……音はまだ続きます。誰かが石を投げてるみたいです。
こんな時間にまだ遊んでるのかと気になって注意深く忍び寄った所、池のほとりに4・5歳の男の子がしゃがんでいました。そばにはプラスチックの小さいバケツが置かれています。
「何をとってるの?」
好奇心から背中に尋ねた所、男の子はそっけなく答えました。
「僕の指」
「えっ?」
びっくりしてバケツを覗き込むと、濁った泥水の中にザリガニが数匹いました。
悪趣味な冗談に青ざめた顔で苦笑いし、男の子に注意します。
「嘘じゃん、ザリガニじゃん」
「嘘じゃない。コイツらが食べたんだ。指」
男の子の手の指が欠けているのを目の当たりにし、全速力で逃げ出しました。
後で知りましたが、あの池では二十年前に男の子の死体が上がったそうです。
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