黒猫の生まれ変わり

数年前、近所の地域猫が相次いで姿を消しました。
原因はわかりません。

実質的な飼い主がいない地域猫が消えたところで警察が捜査してくれるはずはなく、皆はあっというまに事件を忘れ去りました。

しかし私はなかなか忘れられません。熱心に餌をあげて可愛がっていたのです。中でも心配なのは一番体が小さいオスの黒猫、クロちゃんの消息でした。

どうか無事でいてくれますように……。

その後三軒隣のSさんの長男が結婚し、可愛い男の子が産まれました。うちにも挨拶にきてくれましたが、赤ちゃんなのに真っ黒な髪がふさふさしているのが印象的です。

「あんまり泣かないから手がかからなくてすむよ」

Sさんはそういっていたのですが……。

ある日の散歩中、赤ちゃんを抱っこして歩いていたSさんご夫婦は一人の青年とすれ違いました。
すると赤ちゃんが真っ赤な口を開け、火が付いたように泣き出したのです。

赤ちゃんの口から迸りでたのは甲高い子猫の鳴き声でした。それを聞くなり青年は青ざめ、家へと飛んで帰りました。

後日、青年の自宅の庭から大量の猫の骨が発見されました。彼こそ猫をさらって殺していた犯人だったのです。

生まれ変わったクロちゃんには自分を殺した男がわかっていたのでしょうか。