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aoさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

実験室の人型のシミ
長編 2022/02/25 11:52 1,112view

 私は地方国立大学で研究活動を行っています。私の研究室には10何年か前から、ある不気味な噂があり、私と同じコース出身の人なら、必ず知っているだろう噂です。その噂とは、「研究室に人のシミがあり、一人になると化けて出る」です。私はその噂を知っていましたが、私が当時進めていた動物の代謝に関わる研究をするにはその研究室を選ぶしかないので、選びました。

 私の研究室の教授は、私たちにあまり干渉することがなく、実験室にも入ってこないので、楽しい環境下で実験をしていました。また、実際に入ってみると、実験室の床には確かにシミがありましたが、別に被害など何もなかったので、気にすることもなく研究活動を行っていました。私は自身の研究に興味があり、没頭して昼夜を問わず研究活動を行っておりました。そして、そのまま私は同じ研究室のまま大学院に進みました。そんな熱心な姿や信頼される私を見て、研究室の教授は私のことを右腕として認めてくれるようになりました。

 数か月後、教授と私との2人で飲み屋に行ったとき、教授が実験室のシミの話を始めました。「あのシミは・・僕のせいなんだ。」私は教授にそう言われましたが、いまいちピンときませんでした。私は教授にどういうことなのか尋ねると、教授は「あのシミにはモデルとなった人物がいて、その人物は私と同級生なんだ。」聞くところによると、14年前、当時の研究室は、私の教授と同級生含め9人の学生がいたそうです。就職組が多い私の大学では、研究をそこまでバリバリに行う人は少なく、当時も教授と同級生の2人のみが、昼夜を問わず研究活動を行っていたみたいです。教授と同級生は仲が良く、研究テーマは異なりますが、同じ研究室で精を出していました。2人とも将来の夢は研究職だったそうです。ところが、あることを境にして、事情は大きく変わりました。教授が、硫酸が入った瓶を棚から降ろす際に、机に落としてしまいました。机に落ちた瓶は割れてしまい、同級生の顔や腕などに多少なりともかかったそうです。その瞬間、硫酸による火傷と痛みから同級生は苦しみ、すぐに病院に運ばれました。命に別状はなかったのですが、その同級生には後遺症が残ってしまいました。外傷のほか、PTSDを発症してしまったそうです。その1年半後、その同級生は自殺したそうです。不気味なことに、実験室のシミはその後にできたそうです。当時の教授を教えていた教授からは、「あなたが意図的にしたことではないし、同級生の無念も込めて、良い意味で気にしないで実験を続けなさい。」と言われ、研究を続け、博士号を取得した後、今の私の研究室の教授になったそうです。そして、教授は「実験室のシミはあまり見たくないから、実験室には極力入らない。」と語りました。

 飲み会が終わり、夜の12時頃、私は実験室にどうしても用事があったので、教授と別れて実験室に戻りました。実験室には当然、私一人しかいませんし、大学にも私を含め、数人しかいないくらいでした。シミの話を聞いてから、改めて実験室のシミを見ると、恐怖というか、何とも言えない感情を抱くようになりました。そして、このシミのモデルとなった人物が私と同じ年齢くらいの時に自殺したと考えると、ソワソワし始めました。このシミの話は、ほかの人には漏らさないでと言われていたので、誰にも伝えるつもりはないのですが、その日以来、実験室ではシミを踏まないようにして実験を行いました。どうしても気になるので、模様替えということにして実験台を動かして、そのシミを隠しました。

 しかしながら、その夜、そのことが原因で見も震える出来事が起こりました。一人で実験室にいるにも関わらず視線をどことばかりか感じます。恐怖を抱きましたが、その実験を夜のうちにしておきたかったので、イヤホンで音楽を聞きながら実験をすることにしました。音楽をかけている途中、プツッととまったので、「ん?」と思った瞬間です。「痛い。痛い。痛い。」とゆっくりした低い声が聞こえました。私はその瞬間、震えあがり、咄嗟に「シミの上に実験台を置いたからだ。」と判断をし、実験台をどけました。驚いたことに、そこにシミはもうありませんでした。私はわけが分からなくなり、急いで実験室の最低限の後片付けをすました後、帰宅しました。

 翌日、私は後輩に「掃除してくださり、ありがとうございました。」と言われました。私は、「掃除?」と聞き返すと、「シミを消してくださり・・」と言われ、私は「自分は消してないよー」と答えました。しかし、後輩は私に奇妙なことを言いました。「何言っているんですか、先輩。昨日、ぞうきんで床を一生懸命拭いていたじゃないですか。忘れ物をとりに実験室にいったとき、私声かけましたし、先輩も返事しましたよー。」私は、実験台を動かしただけで掃除をしていないし、ぞうきんを持った覚えも勿論ない。後輩の言うことがよく分からなかったが、否定し続けるのもおかしいと思い、とりあえず返事をした。そして、その後すぐに教授のもとへ行き、シミが消えた話をした。教授は「どこかに行って、成仏できたからシミが消えたのかな。」と、とりあえず言ってくれました。私はそれを信じることにしました。

 それからというものの、シミの話や、ぞうきんで拭いていた話を忘れ、私は大学院を卒業し、就職しました。就職先の中国地方では、社宅に住み始めました。荷物整理を行い、クローゼットにスーツ等をしまおうとクローゼットを開けました。そのとき、私は思わず「え?」と声が出てしまいました。クローゼットを開けると、そこに人の形をしたシミがありました。しかも、あの時、実験室にあったシミの形そっくりです。私は驚いて、とりあえず外に出ました。相談する相手もおらず、まだ別にシミを見ただけなので、何もなかったかのように戻りました。それからというものの、私はその社宅に住み続けました。クローゼットのシミはあまり見ないようにしていますし、また不気味な出来事も起こりませんので、今では気にしていません。なのですが、一つだけどうしても今でも出来ないことがあります。それは、あの日、「痛い。痛い。痛い。」の声を聞いて以来、イヤホンで音楽をかけることが出来なくなりました。いつ、またあの声を聞いてしまうことになるか分からないので。

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関連タグ: #不気味#声#夢#病院
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