泥の花嫁
投稿者:壇希 (11)
「何だ、あれ?」
マンションの下に着くと、シュンは上を見上げ首を傾げた。見ると、六階の通路の照明の一つが点滅している。切れかけていたり接触の問題ではなく、しっかりと点灯と消灯を等間隔で繰り返しているのだ。
「あれ俺の部屋の前だよ」
シュンが気味悪そうに言った。しかし帰らない訳にはいかない。俺たちは気にしないように努め、エレベーターに乗った。
点滅は俺たちが部屋の前まで来ても収まることはなかった。
「明日管理会社に言わなきゃな」
シュンはそう言いながら扉を開けた。
部屋の中に入ると、こちらを向き驚いた顔をしている女性と目があった。
「やだ、お客さんが来られるなら事前に言っといてくださいよ」
女性は慌ただしく立ち上がると、台所へと入って行った。
「ごめんなさいね、すぐに何か作りますから」
これは申し訳ない事をした。こんな遅くに帰ったばかりに奥さんに変に気を使わせてしまった。
やはり今日は帰るべきだった。今からでも遅くないと、俺は隣にいるシュンを見た。
シュンは、俺のことを凝視していた。まるで様子を観察しているように。
シュンの様子がおかしい。そういえば、おかしいのはそれだけではない。部屋にいる奥さんも変だ。
なぜか純白の花嫁衣装を着ているのだ。あまりに普通に着ていたので、違和感を感じなかった。
そして、一番おかしいことに気づいた。
シュンは、結婚していないのだ。
その事実に気づいた途端、部屋の明かりがバチンと落ちた。
暗闇の中、冷たい何かに手を握られた感触があった。
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次に私が目覚めたのは、自分の部屋のベッドだった。あれからどう帰ったのか、何も覚えていない。
うらやましい