飛行機事故の手記
投稿者:くにしろ (4)
まだ若い頃、私はとある劇団に所属し、お芝居の勉強をしておりました。初めて見つけたやりがいのある仕事で、一作一作、生活のすべてをかけて臨んでおりました。
その時いただいた次回作は、飛行機事故にかかわるお話でした。
私は「これは、遺族の方を傷つけることのないよう、心して臨まなければ」と気持ちを新たにしたところでした。
私はとある飛行機事故の遺族の方の手記を購入し、部屋で読んでおりました。
当時の私は、憑依型とでもいうのか、役に取り組むとのめりこんでしまい、自分か役か、境界がわからなくなることがとてもよくありました。
そしてこの時も、手記を読みながらベットの上で自分のことのように涙をして、とある少年の話を読んだところで、ここまでにしようとそのまま眠ったのです。
その時私の住んでいた部屋は、窓が面していたわけではないにしろ、建物が某有名墓地の前にありました。霊感が特になかった私は、深く考えることもなく、ベットをつけた壁にインテリアとして何枚も鏡を張り付け、そこで寝ていました。
そしてその夜のことです。私は、急に上から全身をすごい圧力で押されて苦しくて目が覚めました。
金縛りは初めてで「なにこれ?!」とパニックでした。かなり長く続いた後、背を向けている壁側の、足元の方から、明らかに誰かの歩いてくる重圧が、伝わってきました。それは当時一緒に住んでいた同居人ほど重くもなく、飼っていたねこほど軽くもない、子供一人くらいの大きさの重みだったのです。
その歩みが徐々に頭の後ろまで上がってきて、頭を通り越したところで、ふっと消えていき、金縛りはとけてゆきました。ほっとしたものの、その歩みを感じた壁側を見ると、なんと私はかなり壁にそって寝ており、なにかが通れる隙間などなかったのです。でも確かに誰かが通ったのです。そして更に驚いたのは、その小さな足音が消えたのは、枕元にある、飛行機事故の手記の上でした。
のめりこみすぎて、その子を呼んでしまったのかとも思い、少し霊感に詳しい人に話を聞いたところ、おそらくその手記の子供さんではなく、墓地にいる似たような子供さんの霊を呼んでしまったのではないか…ということでした。それから私は鏡も取り外し、塩を置き、やたらとのめりこみすぎるのをやめ、しっかり現実と境界を持つよう気を付けるようになりました。
飛行機事故の演劇って珍しいですね。
オスタカヤマですかね?